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「移転まであと1年」札幌ドーム〝日本ハム移転の穴〟どう埋める? 赤字残る可能性も
https://news.yahoo.co.jp/articles/5115cbfa168afe59b762df067f5d6143dd24cb27
巨大施設の行く末は、本当に大丈夫なのだろうか。プロ野球・北海道日本ハムファイターズが今季限りで移転する札幌ドーム(札幌市豊平区)。新型コロナウイルス流行前の2019年度は、プロ野球が利用用途の47%を占める「稼ぎ頭」だった。日本ハム移転まで1年を切り、新たな活用策を取材すると、「ビッグボス」こと新庄剛志監督の采配で盛り上がるチームとは裏腹に、心配が募るばかりの状況だった。【高山純二】
◇公共施設ならではの足かせ
札幌ドームは01年に開業した。02年に日韓共催のサッカー・ワールドカップ(W杯)の試合が行われ、04年シーズンから日本ハムが本拠地として活用する。札幌市の第三セクター「株式会社 札幌ドーム」が運営し、19年度の売上高は39億7200万円。だが、コロナ禍の20年度は過去最低の18億6800万円にとどまり、営業赤字が5億100万円に上った。
ドーム社は過去、大型ビジョンの更新などの大規模な設備投資をした14、18年度しか赤字になっておらず、大型設備投資をした年度を除けば20年度が初の赤字決算だった。施設自体の建設費は442億円で、市債残高は20年度末で96億円。32年度まで返済が続く見通しとなっている。
一方、日本ハムは16年、公共施設であるドームならではの使用上の制約などを理由に、本拠地移転を検討中と表明。球場の管理・運営権を持っていないことから、独自のファンサービスなどを自由に展開できず、不満を募らせていたとされる。このため、市の残留要請を断り、18年に北広島市への本拠地移転を正式に決定。当時の球団幹部は「札幌ドームとは立ち位置が違い、パートナーたり得なかった」と漏らした。日本ハムは現在、北広島市に新球場・エスコンフィールド北海道を建設中で、23年3月の開業を予定する。
◇日ハム移転の穴埋めに苦悩する市
今季の本拠地開幕戦となった3月29日の埼玉西武ライオンズ戦。入場チケットは完売し、約2万人のファンがドームで、新庄監督の「空飛ぶバイク」を使った入場パフォーマンスを見守った。この稼ぎ頭の日本ハムの移転を受け、ドームの経営が不安視されている。
秋元克広市長は18年の移転正式決定を受けた臨時会見で「マイナス分の収支を埋めていくため、新たな活用を考えていく」と述べ、19年の市長選でも市税の投入を避けるため、具体的な活用策をまとめる考えを示した。
市スポーツ部企画事業課によると、市とドームは4本柱の収支改善策を計画。1本目はサッカーJ1・北海道コンサドーレ札幌が主催する全20試合をドームで開催すること。ただし、これまでもすでに16試合をドームで実施しており、増加分はわずか4試合にとどまる。
2本目は「新コンサートモード(仮称)」だ。約4万人を収容できるドームは、コンサート会場として広く、相応の集客のできるアーティストが限られているため、コンサートの開催が年間平均で10回程度にとどまっていた。新コンサートモードはドームの内部に幕を張って、あえて座席数を削減。2万人規模のコンサートが開催できるようにする。市は22年度予算に10億円を計上し、計画を進める。深井貴広課長は「2万人規模のコンサート会場は市内になく、新たな需要の掘り起こしができると判断した。コロナ下で不透明な部分もあるが、年間で10~12回を期待したい」と説明する。
残る柱の2本は展示会誘致と自主イベント開催。19年の実績で8日間開催の展示会は26日間、同9日間開催の自主イベントは13日間の開催を目標に掲げる。4本柱の収支改善策を目標通りに誘致できれば、サッカー4日間▽コンサート10~12日間▽展示会18日間▽自主イベント4日間――によって最大で38日間を埋めることができる。ただし、それでも年間で約70試合あった日本ハムの主催試合の半分程度にとどまるのが実情だ。
深井課長は「日本ハム移転の穴を埋めるべく、四つの柱のほかにも、あらゆる可能性を考えている」と話す。仮に日ハム移転後に赤字になった場合については「協議が必要だと思うが、市長は『市民負担を増やさない』としており、税の投入はないと考えている」と述べた。
市は当初、セ・リーグの試合の誘致も検討した。だが、道内のプロ野球開催の権限は日ハムが持っている。このため、「全く未定」(企画事業課)という状況で、日本ハムとの交渉も進んでいないという。