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パチンコ業界、参議院選・勝負の行方は?
◆パチンコ業界は無視できない票田
発端は3年前の参議院議員選挙。パチンコ業界は、その長い歴史の中で初めて「族議員」の擁立を決め、民主党からの鞍替え議員を積極的に応援した。結果は「落選」であったが、それでも自民党は、6万~7万の票を獲得したパチンコ業界は無視できない票田という認識を得たし、パチンコ業界側も「次こそは」と気持ちを奮い立たせた。
パチンコ業界の政治団体である全日本遊技産業政治連盟は、夏の参議院選挙において自民党比例代表の公認候補となっている木村義雄氏を全面支援することを発表した。パチンコ業界にとって、どうしても負けられない二度目の選挙戦が始まる――
◆パチンコ業界と政治が接近する事情
パチンコ業界と政治の接近、こと自民党との接近には、業界側の背に腹は代えられない事情がある。
国会でカジノ関連法案が成立するタイミングで、ギャンブル等依存症対策基本法が制定され、公営ギャンブルと同様、全国のパチンコ業界も厳しい対策を講じることが求められた。
業界にとって特に深刻だったのは、遊技機の射幸性の徹底した抑制であった。遊技機等規則が改正された。大当たり確率の分母は引き下げられ、1回の大当たりで獲得できる出玉数も大きく規制された。
コロナ禍も相まって、パチンコを楽しむファン数は大きく減り、それに比例するかのようにパチンコ店数も年間500~600店舗が閉店・休業に追い込まれた。
このような窮状下で業界側が、規制の緩和やなんらかの救済施策を求めようにも、警察庁との話し合いでは大きな果実を得ることは出来ない。当たり前だ。警察庁とて官僚組織。警察庁の立場で言えば、決められた法律に従って粛々と規制強化するより仕方がない。
だから、政治である。
規制の大本となる法律や政治の世界にアプローチをしなければ、パチンコ業界は規制一本槍の危機的状況を脱することが出来ない。このような事情が、3年前の参議院選挙における族議員の擁立へと繋がった。
◆政治の意向が強く反映された「セーフティネット保証5号追加」
3年前の参議院選挙以降、パチンコ業界が政治に救われた目に見える果実があった。
コロナ禍により営業自粛を余儀なくされたパチンコ業界に対し、政府は、これまでは日本政策金融金庫や商工組合中央金庫といった政府系金融機関・信用保証協会による融資・保証の対象外であった「パチンコ店」を新たに追加したのだ。いわゆるセーフティネット保証5号への追加である。
この制度は、経営の安定に支障が生じている中小企業者への資金供給の円滑化を図るため、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で借入債務の80%保証を行う制度であり、これにより民間金融機関による実質無利子・無担保・据置最大5年の融資制度などが利用可能となった。
巷では余り知られていないことであるが、これにより、コロナ禍の元凶が如くマスコミの袋叩きにあっていた多くのパチンコ店が、閉店・廃業、規模縮小の危機を脱することが出来たし、この「セーフティネット保証5号追加」にあたっては、政治方の意向が強く反映されたと言われている。
では、ややこしい政治や金融の話が、日々のパチンコの戦果にどう繋がるのか?
当たり前の話ではあるが、パチンコ店も慈善事業をやっている訳ではない。営業を続けるためには利益が必要である。キモは、ではどれだけお客さんに負けてもらうのかということ。
業界に対する規制が厳しいままだと、客数や売上が減る。したがって、既存客から利益をより多く頂戴するよりほかない。しかし業界に対する様々な規制が政治の力で少しでも緩和されれば、パチンコ店は中長期的な展望を持つことが出来、当面の利益確保よりも、より長い視点で「集客できる営業」と選択することが出来る。結果、相対的に「勝ち」の確率は上がる。
とにもかくにも、この夏の参議院選挙は、パチンコ業界の未来にとっての分水嶺となるかも知れない。少なくとも業界側は悲壮な覚悟で迎える夏である。業界が全面支援を表明した木村義雄氏は、衆議院7期、参議院1期をつとめた自民党の古参議員。しかしそんな彼も3年前の夏は落選している。木村氏にとってもパチンコ業界にとっても2度目の落選は死活問題に直結する。
はてさて、どうなるか。
<文/安達 夕>
【安達夕】
フリーライター twitter:@yuu_adachi