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過去150万年間のCO2濃度解明に成功 海底堆積物を利用 (北大・東大)
海底の堆積物中に含まれる炭素の同位体比を使って、過去150万年間のCO2濃度を求めた=北大・山本教授提供
北海道大学の山本正伸教授や東京大学の阿部彩子教授らの研究グループは、過去150万年間の大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の変化を解明した。海底の堆積物を使う手法を開発し、これまで可能だった過去80万年間より約2倍の期間の解析に成功した。2年後をメドにさらに4倍強の600万年前まで分析し、温暖化の正確な未来予測に役立てたい考えだ。
100年程度の短期的な地球温暖化と人為起源のCO2排出の間には密接な関係があると知られている。ただ数百年以上の長期スパンで見ると、地球は温暖化と寒冷化を繰り返すものの、CO2濃度と気温などの間の関係は未解明だ。300万~400万年前には現在の地球と同じかそれ以上暖かい状態が続く時代があったという。山本教授は「過去の地球を分析することで、現在の温暖化が進んだ後の未来の環境を予測できる」と話す。
研究グループはインド東部のベンガル湾海底で採った堆積物に含まれる陸上植物を手掛かりにする手法を考案した。陸上植物に含まれる質量(重さ)がわずかに異なる炭素同位体の割合に着目して、コンピューターシミュレーション(模擬実験)を使い植生の変化と気温やCO2濃度の関係を推定した。
その結果、「同地域では気温や降水量ではなく、CO2濃度に応じて育つ植物が変化する」(阿部教授)とわかった。そこで堆積物の同位体比の変化を使って、CO2濃度の変化を推定できると考えた。
ベンガル湾の海底から150メートル程度の堆積物を調べ、これまで分かっていなかった過去150万年間の連続的なCO2濃度分析ができた。100万年前よりも前の温暖な時代にCO2濃度が想定されていたほど高くないなど、予想外の結果も得られた。
南極の氷から得られる過去の空気を分析する従来手法は、古い状態を残す氷を探すことが難しく、現状80万年前の分析が限度だという。
2022年4月1日 19:00 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC011W60R00C22A4000000/