あわせて読みたい
【悲報】20年後の日本の経済規模は韓国の半分以下になるwwwww
※本稿は、野口悠紀雄『日本が先進国から脱落する日』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■日本の一人あたりGDPはアメリカの約60%にまで落ちた
その国全体の経済活動規模を表す経済指標にGDP(国内総生産)がある。
GDPの値は人口が多くなれば大きくなる。したがって、GDPが大きいからといって、必ずしもその国が豊かであるわけではない。そこで、GDPを人口で割った値が、豊かさを表す指標として用いられる。これが、「一人あたりGDP」だ。
一人あたりGDPは賃金とほぼ同じ動向を示す指標であり、国際比較データを入手しやすい。これについての時間的な推移を見ると、図表1に示すとおりだ。
2020年における一人あたりGDPは、日本は4万146ドルであり、アメリカの6万3415ドルの63.3%だ。
昔からそうだったわけではない。2000年においては、市場為替レートで換算した一人あたり名目GDPは、アメリカが3万6317ドル、日本が3万9172ドルであり、日本が8%ほど高かった。
ところが、その後の成長に大きな差があった。
2000年から2020年の間に、自国通貨建て一人あたり名目GDPは、日本では422万円から428万円へと1.4%しか増えなかったのに対して、アメリカでは3万6317ドルから6万3415ドルへと74.6%も増えたのである。
このために、2020年には、日本はアメリカの63.3%にまで落ち込んだのだ。
■アベノミクスで「韓国並み」に急落した
一人あたりGDPでは、図表1に見るように、2020年で日本が4万146ドル、韓国が3万1496ドルなので、まだ日本が高い。しかし、両者は接近している。
アベノミクス以前の時期には、日本の一人あたりGDPはアメリカとあまり差がなかったが、いまや大きな差がある。その一方で、アベノミクス以前には韓国との差は大きかったが、いまやあまり大きな差がない。
つまり、アベノミクスの期間に、日本は「アメリか並み」から「韓国並み」になったことになる。
■韓国に抜かれるのは時間の問題
しかも、日本の値が停滞しているのに対して韓国の値は成長している。このため、一人あたりGDPで、日本はいずれ韓国に抜かれる可能性が高い。事実、賃金ではすでに韓国のほうが高いのだ。
問題は成長率だ。2000年から2020年の間に、日本の一人あたり名目GDPは1.02倍にしかならなかったが、韓国の値は2.56倍になった。日本が停滞している一方で、韓国が急速に伸びている。
その結果、2000年には日本の31.3%でしかなかった韓国の一人あたりGDPは、2020年には78%になっている(図表1参照)。
■半世紀にわたる「先進国」時代の終わり
図表2はショッキングだ。日本はこれまで約50年間にわたって先進国の地位を享受してきたが、いまそこから滑り落ちる寸前にあることを示している。
この図は、1960年から現在に至る各国の一人あたりGDP(市場為替レートによるドル換算値、世界銀行のデータ)について、OECD諸国の平均値を1とする指数の推移を示したものだ。
日本は、1970年頃から約50年間にわたって、一人あたりGDPでOECD平均よりも高い水準を維持してきた。OECD諸国の平均値は、先進国の水準を表す指標と考えることができるだろう。したがって、この期間、日本は先進国の地位にあった。
しかし、20年ほど前から日本の相対的地位が低下し続けている。日本はOECDの平均レベルに逆戻りし、そして、いままさに、このレベルを下回ろうとしている。つまり、先進国としての地位を失おうとしている。
■われわれは歴史的な転換点に立っている
詳しく言うと、2015年に日本の値は0.981となり、すでに1を下回った。しかし、これは円安の影響であり、一時的なものに終わった。また世界銀行のデータではなく、OECDの統計によると、2020年に日本の値はすでにOECDの平均を下回っている。
ただ、この年は新型コロナの影響で長期的な傾向が乱されているので、あまり参考にならない。
また、ここではOECD平均を先進国の水準と定義したが、「先進国」についてはさまざまな定義がある。例えばIMFでは、一人あたりGDPのほか、輸出品目の多様性やグローバル金融システムへの統合度合いを考慮して40の国・地域を先進国としており、日本はその第24位だ。
この定義でいうと、日本の地位が下がっても、まだしばらくは先進国であり続けるだろう。だから、「先進国」という表現を用いることには注意が必要だ。
ここで強調したいのは、日本がいま歴史的な転換点にあることだ。
■1995年を境に減少の一途に…
図表2に示されている日本のグラフは、1995年頃を軸にして、ほぼ左右対称形になっている。
現在とちょうど対称の位置にあったのが、60年代末から70年代初めにかけての時期だ。
日本は1964年にOECDに加盟をするのだが、この頃、日本は高度成長の結果、先進国の仲間入りをはたした直後だった。1963年度の「経済白書」のタイトルは「先進国への道」だった。
図表2で見ても、日本が、急成長の結果OECD平均のラインに近づき、追い抜いていく様がよく分かる。
他方で、第二次世界大戦後、圧倒的な経済力を誇っていたアメリカの相対的な地位は低下していた。これは、図表2でアメリカの線が傾向的に低下していることで示されている。
1985年頃に一時的に上昇しているが、これは同年のプラザ合意でドル高が修正されたことによる一時的回復だ。
それでもまだ、1973年のアメリカの一人あたりGDPは、日本の約1.7倍だった。アメリカに行けば、その豊かさに圧倒された。
なお、同年の韓国の一人あたりGDPはOECD平均の10.4%であり、日本の101.3%とは比べものにならなかった。
■いまは1970年代初めと同じ経済状態
いまの日本の一人あたりGDPは、OECD平均との対比でも、またアメリカとの対比でも、1960年代末から70年代初め頃と同じ状態にある。
図表2で見るように、いま日本の一人あたりGDPはOECD平均とほぼ同じだ。これは、70年頃と同じ状況だ。
アメリカの一人あたりGDPは日本の約1.6倍だ。この数字も、70年代の初めとほぼ同じだ。
1995年を軸とする左右対称の姿が続いていくとすると、図表2の点線で示すように、日本の値は、OECDの平均値を下回っていくことになり、2030年頃には、OECD平均の半分程度の水準になってしまうだろう。
つまり、日本は「先進国」とは言えなくなってしまう。
■韓国、台湾との差が開いていく予測
これに対し、韓国の指数は、このグラフのほぼ全期間を通じて上昇を続けている。1960年には、韓国の一人あたりGDPはOECD平均の11.9%にすぎなかったが、1994年に50%を超えた。1998年にはアジア通貨危機で38.1%に落ち込み、2009年にはリーマンショックの影響で再び落ち込んだ。しかし、こうしたショックは短期的な影響にとどまり、いま韓国はOECD平均に迫っている。
台湾もほぼ同様の傾向だ。いまの状況が続けば、日本と韓国・台湾の位置が逆転し、差が開いていく可能性がある。実際、OECDによる長期経済予測は、そのような姿を描いている。
OECD諸国との相対的な地位の低下を食い止めるためには、最低限、OECD諸国平均の成長率を実現しなければならない。そして、日本のかつての地位を挽回するには、OECD諸国平均より高い成長率を実現する必要がある。
ところが、2010年から2020年にかけての直近の10年の一人あたりGDPの増加率は、OECD平均が1.09倍なのに対して、日本は0.89倍だ。2000年から2020年では、OECD平均が1.66倍なのに対して、日本は1.03倍だ。
■日本はそのうち、マレーシア並みになる
この傾向を逆転するのは容易なことではない。しかし、そうしない限り、図表2に示されている日本の左右対称の図形がさらに「先進国からの脱落」に向かってしまうことになるだろう。
これまでの傾向が将来も続くとすれば、数年後に韓国が日本を追い越すのはほぼ確実だ。そして、その後さらに格差が広がっていくだろう。
仮にこれまでの成長率が将来も続くとすれば、20年後には、日本の一人あたり名目GDPが4万1143ドルなのに対して韓国は8万894ドルと、ほぼ倍になる可能性すらある。
日本はそのうち、マレーシア並みになる。そこで止まらず、インドネシア並み、ベトナム並みになる危険がある。これは、そう遠い将来のことではないかもしれない。
———-
一橋大学名誉教授
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問を歴任。一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書に『「超」整理法』『「超」文章法』(ともに中公新書)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社)ほか多数。
———-
<このニュースへのネットの反応>