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韓国、まさかの「ウィズ・コロナ爆発的感染」
「まさか、韓国でこんなに感染者が出るとは・・・」
防疫模範国と言われた韓国で誰もが驚くほどの新型コロナの感染爆発が続いている。いったい、日常生活はどうなっているのか?
韓国で生活をしている筆者は、個人的には、感染のピークは、先週あるいは先々週くらいだったのか、と感じていた。
ピークはいつか?
大統領選挙の投開票日だった3月9日前後が最もすごかった。冗談ではなく、毎日、知人や同僚か新たに感染した。
筆者の自宅近くの病院を通りかかるたびに、ものすごい行列だった。ところが、ここ数日は減り始めた。病院の行列も短くなってきた。
韓国政府は。毎日午前零時現在の新規感染者数を発表している。
3月17日に、62万1281人だったが、それ以降は18日40万7016人、19日38万1454人、20日33万4708人、21日20万9169人と減ってきた。
韓国の人口はざっと日本の半分で、20万人でもすごい数だ。人口当たりの感染者数は世界一だという報道も相次いだ。
それもようやく減ってきたかと感じていた。
検査を受けない人も増えている?
「私はまだピークだという感じはしていない」
ところが、3月21日に会った大手紙の幹部は、筆者の「実感」をあっさりと否定してみせた。
「周辺での感染は相変わらず増えている。週末に検査数が減った影響もある。何よりも、最近は検査を受けない若者がどんどん増えている」
全く油断できないということか。いったいピークはいつなのか?
「おはようございます。いつもの司会者がコロナに感染したため、今週は私が担当します。私も、2週間前に感染して復帰したばかりです」
3月21日朝、ラジオのニュース番組は、こう始まった。すぐ登場したコメンテーターも、「私も感染して復帰したばかりです」。
累積感染者数1000万人
韓国で、新型コロナの爆発的な感染が始まったのが2月半ばくらいか。
政府統計を見ると、1月1日(いずれも午前零時時点での集計)の感染者数は4414人だった。1月26日に1万人を超え、2月2日に2万人、5日に3万人、9日に4万人を超えた。18日には10万人に達した。
3月になるとさらにドカンと増えた。
3月1日:13万8990人
8日:20万2710人
15日:36万2303人
累積感染者数は2月6日に100万人を突破したが、3月9日に500万人を超えた。3月21日に958万人2815人になった。数日内に1000万人超えは確実だ。
何でこんなことになったのか?
感染者数の実態
1日の感染者数が30万人とか、17日の60万人とかの数字をどう見たらよいのか?
韓国政府は感染者の爆発的な増加を受けて3月14日から病院で簡易(迅速)抗原検査を受けて陽性の場合は、「コロナ感染」とみなすと基準を変更した。
それまでは、簡易検査で陽性となった場合はPCR検査をして、ここで陽性だった場合に初めて「感染」を認定していた。
簡易検査で陽性判定するようにしたために陽性者が増加したとの見方はある。
だが、政府関係者は「いまの簡易検査の精度は高いから、PCR検査で陰性の人まで陽性と判定している例はきわめて少ない。そもそも症状があって病院に行く人が多く、検査と判定のやり方を変えて一気に感染者数が増えたとは考えにくい」と話す。
検査方式の変更で、感染者数が増えていることはないというのだ。
それどころか、この関係者も「保健所や病院で検査を受けようと思っても、かなり混雑している。だったら、しばらく家で様子を見ようと検査を受けない人も相当数いる。実際の感染者数は、発表されている感染者数よりずっと多いと見るべきだ」という。
先の大手紙幹部は「感染判定を受けても、何かしてくれるわけではない。薬も足りない。60代以上や深刻な症状が出ている感染者には治療薬を処方したり、電話で連絡をするが、圧倒的多数は軽症や無症状で、当局も何もしない。だったら、わざわざ検査を受けに行かない」と説明する。
それほど感染者が多いということだ。
会合が増えた、子供の感染も
感染者が増えた理由について、韓国で誰もが口を揃えて指摘するのが「年末以降、会合、会食が増えた」ことと「子供の感染が急拡大した」の2つだ。
韓国政府は2021年末以来、徐々にコロナ感染防止のための規制を緩和している。
飲食店の営業時間制限、会合に参加できる人数制限、百貨店、飲食店などでのQRコードを使った入場管理など、厳しかった管理規制をどんどん緩和した。
国民の間に広がっていたコロナ規制に対する疲労感とストレス、飲食店など規制対象になった業種に対する打撃の緩和などが目的だった。
韓国政府は秋以降、コロナワクチンのブースター接種を急ぎ、すでに3200万人、国民の63%が接種を終えた。60歳以上では89%が接種を済ませた。
オミクロン株が比較的重症化しにくいという点も考慮して緩和を進めた。
この意思決定に、大統領選挙への影響があったのかどうかは分からないが、かなり急いで規制を緩和したような印象を与えたのは事実だ。
こうした相次ぐ規制緩和が「オミクロンは軽い」というイメージを広げてしまった。
「オミクロンは重症化しにくいが感染力が強く、感染者が急増すると、いくら重症化率が低くても、結局、医療体制への負担も大きくなる」
こういう説明なのだが、前段階の部分だけが浸透してしまった。1月も2月も、3月になっても、飲食店の人出は以前とは比べ物にならないほど多い。
外れる政府予測
政府の「誤診」も続いた。
1月後半以来、政府高官は、感染予測を大きく見誤る発言を続けてきた。
1月25日に、首相が「3万人程度で感染がピークを迎える」と発言したが。あっという間にこれを超えてしまった。
実際に感染者数は60万人を超えた。20倍も差があったのだ。
2月初めに今度は疾病管理庁長が「2月末に13万~17万人に達する」と述べた。この時期の感染者数は当たったが、ピークでは全くなかった。
連日のように、「もうすぐピークだ」と発言してこれがあっという間に外れることを何度も繰り返してきた。
予想は難しいのだろうが、あれだけの地位の責任者が、記者会見で発言するのだから根拠があったはずで、「どうしてこんなに外れるのか?」不思議だった。
規制緩和の根拠となる感染予測は外れても、規制は次々と緩和した。だから、会合や会食は増える。
これと並行して、ワクチン接種の対象でなかったり、接種が遅れている子供への感染が急速に広がった。
子供が感染すると、親、兄弟、祖父母など家族にも感染する。こうして、感染が止まらなくなった。
死者は最多更新。火葬が追い付かず
「オミクロンは重症化しにくい」はその通りのようだ。
筆者の周辺で、軽く10人、20人を超える感染者の話を聞いたが、ほぼ全員が1週間内に特段の治療なしで日常に復帰した。
こういう話が広がっていることが、感染の疑いがあっても、検査を受けない人が増えている原因だろう。
当然ながら、感染者が増えれば、一定の比率で重症化することも確かだ。
知人の病院理事長は「高齢者や基礎疾患者で重症化した患者で、病床はずっと満杯だ」という。
3月に入って1日あたりの死亡者数も100人を超えている。最近は300人、400人に達しており、「オミクロンは感染しても大丈夫だ」とは言い難い状況でもある。
ソウルでは、死亡者が増えて火葬が追い付かなくなっている。
韓国メディアは連日、遺体を冷蔵施設で保管しているが、これも満杯だと報じている。では、実際には今の流行はいつピークを迎えるのか?
BA2に入れ替わりか?
3月21日午前にラジオのニュース番組に出演した政府高官は「1~2週間状況を見ないと分からない」とかなり慎重になってきた。
特に韓国でもオミクロンの新株である「BA2型」の感染が始まってきた。
韓国メディアによると、ここ数日間で感染者の約4割が「ステルスオミクロン」と呼ばれる新株「BA2」の感染者とみられる。
感染爆発がピークを越えても、急速に感染者が減らないとの見方が出ているのはこのためだ。
韓国政府は3月21日から「社会的距離置き」をさらに緩和した。会食などの人数制限をこれまでの6人から8人に緩和したのだ。
さらにこの日から、海外入国者に対する隔離措置も大幅に緩和した。
ワクチン接種記録を韓国当局に登録している場合、ブースターワクチン接種完了者などに対しては、これまで求めていた入国後の隔離措置を免除することになった。
あれほど厳しかった入国者に対する規制だったのに、思い切った措置だ。
感染者が毎日これほど増え、死亡者も連日最多を更新しているのにどうしてなのか。
政府は感染状況をコントロールできている、オミクロンの特性は重症化しにくい、経済への影響などを考慮した、などと説明する。
だが、医療関係者の間からは「医療現場の負担がどれほど大きいのか理解していないのでは。もう大丈夫という誤ったメッセージを国民に与え、感染者はなかなか減らない」(大手病院長)という不満の声が強い。
感染への恐怖、防疫ストレス
こうした措置に対する一般国民の反応はどうなのか。
毎日、30万人もの感染者が出て、自分の家族や周辺でも感染が続出していることから、数字は感染に対する感覚がどんどんマヒしているようだ。
「政府の社会的距離置きが緩和になるから、8人で夕食に行きますか?」
さっそく、こういうお誘いがあった。政府の規制緩和と感染リスクとは何の関係もないのだが、こういう話にどうしてもなってしまう。
コロナの流行が始まった2年前、感染者が数人出ただけで、町から人が消えてしまった。
1日の感染者が10万人を超えた3月以降、では生活が大きく変わったか?
在宅勤務の会社は増えている。だが、以前のように全員在宅という会社は少ないようだ。
会食や会合は、あまり減らない。筆者は、昼は2~3人で広い場所で会食をするができるだけ夜の会合は避けている。
だが、気休めと言われれば気休めだ。
周辺を見ると、気を遣う人と、全く気にせずに毎日のように夜の会合を続けている人もいる。
保健所検査から自己診断
ここ1か月ほどで変化したのは「検査」か。
以前は、とにかく、周辺で感染者が出るとすぐに「保健所で検査を受けて」という雰囲気だった。
ところが、保健所の無料検査の能力を超えるほどの人が押し寄せた。ある日は、全国で100万人に達したという。
そこで政府は、保健所でのPCR検査を「60歳以上」「基礎疾患者」「簡易検査で陽性判定を受けた」などに限定した。
もう、「とにかくPCR検査を受けて」ということはできなくなった。
そこで急速に普及したのが、自己診断用の迅速抗原検査だ。薬局やコンビニで簡単に買うことができる。1セット6000ウォン(1円=11ウォン)だ。
2交代在宅勤務などを導入している会社で、「出社前に検査を」と社員に配布している例もある。
筆者も、すでに4回ほど検査をした。一緒に会食をした大企業役員は「毎朝検査することになり、もう30回を超えた」という。
筆者の周辺で感染した人も、最近はほとんどが「自己診断で陽性が出て病院に行った」という。
韓国政府が、飲食店の営業時間を緩和、QRコードを使った入場記録管理をやめるとなど、管理や規制を緩和していることに対する周辺の反応は、「もう、いまさら、そういう措置で感染が抑えられるわけではない」という感じか。
感染への恐怖感はあるが、感染を防ぐために「あれもダメ」「これもダメ」と言われ、どこに行ってもあとで追跡できるように記録を残す厳しい防疫生活に「疲れ」を感じていた。
だから、これほど感染者が多いのに、規制緩和に対しては、強い反対がない。
コロナ対策は、文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)政権が自慢してきた数少ない実績の一つだった。いまや、そんな面影はない。
5月10日に就任する尹錫悦(ユン・ソギョル=1960年生)大統領も、最初の大きな仕事がコロナ対策と打撃を受けた飲食店、零細業者、関連業界の支援策になる。
その新政権の政策を練る「政権引き継ぎ委員会」が稼働を始めたが、さっそく幹部が相次ぎ感染して業務に支障が出ている。
いまなお新型コロナが韓国で猛威を振るっている。
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