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ウクライナに「降伏しろ」「妥協しろ」 日本のある著名人の発言にジョージア人が苦言「軽々しく言うな」
ロシア軍の侵攻から祖国を守ろうとするウクライナに対し、日本の影響力のある著名人から、ロシアへの「降伏」や「妥協」を求める発信が見られる。これにロシアの隣国、ジョージア出身で慶応義塾大学SFC研究所上席所員のダヴィド・ゴギナシュヴィリ氏(38)が異を唱えている。
「ウクライナ兵は士気が非常に高い。そうしたなかで、降伏や妥協を求めるのはおかしい。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領にも失礼だ。未来への希望も失われてしまう。軽々しく言うべきではない」
ダヴィド氏はこう語った。
母国ジョージアには親露分離派地域があり、ダヴィド氏が留学生として来日した2008年、ロシア軍の「自国民保護」を口実にした侵攻を受けた。今回のウクライナ侵攻も「断じて許せない」という。
ウクライナの徹底抗戦が続くタイミングで、日本で降伏を迫るような発信が出てきたことには、「倫理上も、合理性の観点からも間違い」という。まず、「倫理上」の解説をする。
「事実上、侵略者のロシアを支持、容認することになる。降伏後も確実にロシアの抑圧でウクライナの被害は続く。その責任は『ロシアに折れろ』と呼びかけた人も共有することになる。倫理上、非常にまずい発信だ」
では、「合理的」にはどうか。
「仮に降伏して戦争は終わっても、今度はロシアの支配下での治安の悪化などで、戦闘中をはるかに上回る犠牲者が出る。ウクライナの降伏は、近隣諸国にも計り知れないほどの大打撃だ。ロシアは次にモルドバなどを狙い、同じことを繰り返す。ロシアと同様、好き勝手にやる国が出て、国際秩序は成り立たなくなる。合理的ではない」
前出のゼレンスキー大統領は8日、英議会でのオンライン演説で、「どんな犠牲を払っても自国を守るために決して降伏しない」と語っている。
ダヴィド氏は「確かに、言論の自由はあるだろうが、ウクライナの大統領が決意を示すなか、『ロシアに降伏しろ』という発信は理解できない。ロシアのプロパガンダ(政治宣伝)にはだまされてはならない。ウクライナが敗北すれば民主主義が危機にひんする。いまはロシアを止めるため妥協せず、団結するときだ」と強調した