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【朝日新聞】日本で上がる「ウクライナは白旗あげたらいい」の声に戦場ジャーナリストが現地から激怒した理由
街に暮らす市井の人の声を伝えてきた。リビウでも、衝撃的な出会いがあった。
佐藤:町工場の若社長として働く30歳の青年がいました。普段は台所用品を作っていたけれど、今は戦車や装甲車が街に侵入しないためのバリケード、
そして兵士たちがつける「ドッグタグ」を作っている。普通、ドッグタグには名前や生年月日、血液型や国籍、そしてナンバーが刻まれています。
でも、彼が作っていたのはナンバーしか書いていない、名前のないドッグタグでした。
僕がリビウで話を聞いた人たちは、国を守るために戦争に行くと話しました。当然亡くなる人も出てきます。
その人たちが無名のドッグタグをつけている。それを見たとき、切なくなった。一人の存在が、番号だけっていうのは……。
――その青年には7歳と3歳の子どもがいる。あなたも銃を持って戦争に行くのかと問いかけると、「行きたい」と答えた。
佐藤:でも、これまでに戦ったことのない青年です。恐怖について聞くと、「そりゃ怖い」と。
「でも、自分が死ぬよりも怖いのは、この国が消滅すること」「だから戦う」と言った。
日本のどこかの評論家だかで、「ウクライナは白旗をあげたらいい」と言った人がいるんでしょう。大馬鹿者ですよ。
だったらウクライナに来て、みんなにそう言いなさいと思う。
自分の国、文化や歴史がなくなるんですよ。安全圏で何もわかっていない、
命を懸けたこともない人がこれから命を懸けようとしている人たちに向かって言える言葉じゃない。
この国はロシアに踏みにじられてきました。ソ連崩壊でようやく独立国家になったのに、またそのときに戻ってしまう。
そうならないために血を流すことを彼らは厭わない。ゼレンスキーも含め、名もない人たちの気概がこの国を勇気づけているんです。
なのに、「10年後にはプーチンが死んでいるだろうから、その後、国に帰ったらいい」なんて馬鹿なことを言っている。
このままだと、10年でこの国はなくなるんです。腹の底から怒りを覚えます。