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映画『大怪獣のあとしまつ』プロデューサーを直撃「予想以上に伝わりませんでした」
「時効警察」シリーズなどで知られる三木聡が監督・脚本を務めた映画『大怪獣のあとしまつ』。人気アイドルグループ・Hey! Say! JUMPの山田涼介主演、女優の土屋太鳳がヒロインを演じた本作は、2月4日の公開初日からSNSを大いににぎわせた。特に、主演の山田も台本を読んで「思わずツッコミを入れてしまった」と舞台あいさつで明かしていたラストシーンは物議を醸した。制作サイドはどう受け止めたのか? さまざまなツッコミに対する言い分は? 企画・プロデュースの須藤泰司氏とプロデューサーの中居雄太氏を直撃した。
【動画】山田涼介のアクションシーンも!『大怪獣のあとしまつ』メイキング映像
■伝わると思っていた三角関係が伝わらなかった
――公開初日からの観客の反応は予想していたのでしょうか?
【中居P】予想外でした。正体を明かせないアラタ(山田涼介)が、怪獣の死体処理を託されたことをきっかけに、元恋人のユキノ(土屋太鳳)とともに雨音(濱田岳)の妨害を押し切り、人間のまま『あとしまつ』できるのか!? この三角関係に関して反応を期待していました。ところが、特撮部分やギャグ要素に反応が偏っている印象を受け、伝えたかった三角関係の部分が伝わっておらず、そこが予想外でした。
【須藤P】ラストの巨大ヒーローが全てを解決するというオチ、これは結局、「神風が吹かないと解決しない」という、ごく単純な政治風刺なのですが、これがほとんど通じておらず驚きました。本作の風刺的な要素に関しては、新聞世代(昭和世代)には概ね理解されて楽しんでもらえたようなのですが、特に、若い人々に伝わっていない事が発見でした。
――「テーマに対する着眼点」は良かったという意見は多く、映画館まで足を運びたいと思わせるパワーがありました。企画の原点は?
【須藤P】企画の原点は三木監督です。雑談の中で三木監督が「怪獣の死骸って、どうしてるんでしょうね」という事を話された時にこの企画が動き出しました。
――着眼点の良さを生かしきれなかった?
【中居P】先ほども申し上げたとおり、「巨大な怪獣の死体のあとしまつ」を巡り、正体を明かせない主人公が、元恋人の協力と、彼女の夫による妨害の狭間で葛藤する物語です。そこに本格的なSF映画のスケール感と、愚かな権力者たちの会話劇による社会風刺の要素を盛り込みました。「テーマに対する着眼点」をもとに、三木聡監督にしかつくれない作品になったと自負しております。ただし、伝わると思っていた三角関係が伝わらなかったために、「期待外れ」が生まれてしまったとも思います。
――事前の宣伝から予想した内容と実際がここまで違う映画ってある?という意見もありますが。
【中居P】製作当初から、(1)「風刺的な政治シミュレーション」と、(2)「コメディ要素」この2つが肝となる映画だと考えていました。宣伝展開に置いてもこの2点を全面に出していくことでそれぞれのファンの方に向けて、訴求を図ったのですが、(1)の要素がお客様に強く印象に残ったこともあり、公開初日から(1)を期待した方が劇場にお越しいただいたかと思います。結果、(2)の要素があることで、「思っていたものと違う」という印象を持たせたと考えています。
【須藤P】予想をはるかに越えて『シン・ゴジラ』の真面目な後日譚的なものを期待してくださったお客様が多かった印象を受けました。ただ、本作は「時効警察」の三木聡監督作品、さらに、タイトルが平仮名で「あとしまつ」と表記していたり、大怪獣<希望>が片足を上げてユーモアな死に際になっているあたりから、完全にシリアスな作品ではなくコメディ要素もあることが観客に伝わると考えていましたが、これまた予想以上に伝わりませんでした。
――山田涼介さんも衝撃的だったというラストシーンについて、「最初からやれよ」という身もふたもない(映画にならない)ツッコミを誘うための映画と考えればむしろ一貫していたとも思えるのですが…。ラストシーンについて言及したいことは?
【中居P】結果、主人公は敵対者に負け、正体を明かして「巨大な怪獣の死体のあとしまつ」をせざるを得なくなる。ビターなエンディングですが、それでも元恋人は「ご武運を」と涙ながらに主人公を見送る、切ないラストシーンをつくりあげられたつもりです。
【須藤P】そして、ご質問の通り、非常に一貫しているのです。
■本作に対する真の評価はこれから
――この映画にはノベライズ(橘ももさんの講談社文庫版と、時海結以さんの講談社KK文庫)があります。このノベライズの立ち位置は?
【中居P】橘ももさんには大人向け、時海結以さんには中学生向けに、ノベライズをご執筆いただきました。特に橘ももさんには、上記の三角関係を主軸に、主要な登場人物3人の背景や心情を丁寧に描いていただきました。
【須藤P】公式ガイドブック的にも使えますし、読後は本作をより楽しめるようになると思います。
――観客の期待に応える、期待を超える作品づくりは簡単ではないと思いますが、映画人として今作から学んだことは?
【中居P】伝えることの難しさを痛感しております。これは宣伝方法のことではなく、本編を観たお客さんの第一印象として「伝わっていなかった」という意味です。
【須藤P】「学ぶ」という段階まで、今回の事象?についてはまだ考えがまとまっておりません。ただ、この間ずっと頭にあったのは、大瀧詠一なら「シャレだよ、シャレ」と言ってくれただろうなと。
――西田敏行さんとふせえりさんが最後に言っていた続編はあるのでしょうか?
【中居P】不毛な権力争いに固執する人類ではなく、ヒーローにしか問題解決できなかった。今回の一件は奇跡的に解決したものの、それでも権力者たちは、相も変わらず愚かな会話劇を繰り広げている。エンドロール後の「続編シーン」は、このような思いを込めています。
【須藤P】エンドロール後の予告は『メルブルックスの珍説世界史パートI』などにもあるような、一種の洒落なのですが、真剣に捉えてくださる方が多かったようですね。でも、これだけ話題になったので、本当に実現したら面白いかもしれません。もちろん予算半額(以下)で!!(笑)
――最後に、これだけは伝えたい!ということがあればお願いします。
【須藤P】かのヒッチコック監督が、演出に対する不満をぶつけてくるイングリット・バーグマンに言った言葉が好きです。「たかが映画じゃないか」。本作に対する真の評価はこれからだと考えております。公開時の騒動で我々が仕掛けた多くの要素が見落とされたままだからです。しかし、それについて語るのは野暮というもの。今後、劇場なり配信なり、本作を目にした方々が、それぞれに発見して楽しんでいただければと思います。十年後、あのコロナの時代に、いい大人がこんなにフザけた映画を真剣に作っていたんだ、という事が、日本映画の矜恃として語られるかもしれませんから(笑)。
――不躾な発言もありましたが、お答えいただきありがとうございました。
『大怪獣のあとしまつ』(だいかいじゅうのあとしまつ)は、2022年2月4日に公開された日本映画。特撮映画では基本的に描かれることのない、怪獣の死骸の処理を引き受けることになった者たちの姿を描く。監督・脚本は三木聡、主演は山田涼介で、松竹と東映による初の共同製作作品でもある。
17キロバイト (2,234 語) – 2022年3月10日 (木) 08:50
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