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プーチン大統領にスポーツ制裁は効力があるのか?
https://news.yahoo.co.jp/byline/mizoguchinoriko/20220301-00284379
プーチン大統領にとって柔道の黒帯は身許を保証するものである(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
SNS時代のスポーツ制裁は「スポーツのチカラ」になりうるか?
スポーツ界では、ロシアによるウクライナ侵攻の制裁として、ロシアを排除する動きが強まっています。
とりわけ、これまで国際柔道連盟からプーチン大統領に名誉会長及び大使の地位を停止したことは、ウクライナ侵攻に対し「それまで!」(柔道用語で試合終了を意味する)とメッセージを送ったといえます。
国際柔道連盟はいち早く、ロシアでの大会の中止やプーチン大統領の名誉会長の停止の対応をしました。
なぜなら、ウクライナ侵攻が始まってからウクライナ柔道家のダリア・ビロディド選手を始め様々なアスリートたちが、現地の情報や反戦のメッセージをSNSで発信し、世界中に情報が共有されたことで多くの人が共鳴をしたからです。SNS時代の対抗措置ともいえるでしょう。
現在、経済界からはロシアへSWIFTでの制裁が行われています。
SWIFTはロシア経済を壊滅的にするとも言われていますが、果たして、スポーツ制裁は、経済制裁のように、プーチン大統領にとってどれだけの効力があるのでしょうか?
■プーチン大統領にとって柔道の帯はレゾンデートル
プーチン大統領は、ロシアでは「トゥルバストロイチェリ」、「Yawara-Neva」など、名門柔道クラブの名誉会長も務め、柔道への造詣が深く、自著「Judo: History, Theory, Practice」という柔道教本も出版しているほどです。
JOC会長、全日本柔道連盟会長の山下泰裕氏とは懇意しており、同じ柔道家として、国際平和の目的として、これまで交流を重ねてきました。
とりわけ、プーチン大統領が2000年9月に来日した際に、講道館から六段の紅白帯を贈った際には「私は柔道家なので六段の帯の重みをよく知っています。母国に帰って研鑽を積み、一日も早くこの帯を締められるように励みたい」と、その場で締めることを丁寧に断りました」と山下氏は語っています。
この発言から分かるように、プーチン大統領は柔道に畏敬の念を持っていることがわかります。日本にいるとあまり感じませんが、海外では柔道の有段者(黒帯や赤帯)は、非常に権威があります。海外の柔道家とって、柔道の黒帯は、身分証明書でもあり、自分を正当化するレゾンデートル(存在理由)でもあるのです。
にもかかわらず、今回のウクライナ侵攻は、柔道の「自他共栄」の精神を愚弄する行為であるといえます。今回の柔道界からの名誉会長停止の制裁は、実質、柔道界からの最後通告でありプーチン大統領とって屈辱的だったに違いありません。
一方で、2月27日、欧州柔道連盟は、ウクライナ侵攻に鑑み、プーチン大統領の名誉会長の地位の剥奪することを発表しました。さらに2007年から欧州柔道連盟の会長を務めてきたセルゲイ・ソロヴェイチク氏が、ロシアのウクライナ侵攻を受け、辞任を表明しました。欧州柔道はプーチン大統領と袂を分つことになりました。
国際柔道連盟が名誉会長の地位を「停止」にしたのに対し、欧州柔道連盟は「剥奪」を決定しました。欧州柔道連盟と国際柔道連盟の対応に温度差があるようにも思えます。