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お弁当を買うと必ず入っている魚の形をしたポリ容器。
瓶の形のものもありますが、印象的だったのはやはりウロコまで精密に表現されているお魚の容器。
これら使い捨ての調味料用のポリ容器は「ランチャーム」と呼ばれるものです。
作っているのは大阪市の株式会社旭創業で、開発したのは創業者・渡辺輝夫氏でした。
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Culture2020.03.08
お弁当に入っている調味料入れ「ランチャーム」は金魚じゃない!開発秘話やモデルの魚を紹介
近藤とも
小学校低学年の頃だったでしょうか。わたしは金魚を飼っていました。母が玄関の下駄箱の上の金魚鉢で飼っている赤いのとは別の金魚です。わたしの金魚は白っぽくてお菓子の箱の中、水もないところでゆらゆら…としませんでした。よく見たら金魚ではなくてほかのお魚でした。ああ勘違い!
もしかしたら、みなさんのなかにもおなじお魚を箱の中に集めていた方がいるかもしれません。何の話かって?お寿司やお弁当のおしょうゆ入れのあのお魚の形のケースです。最近あまり見かけなくなった気がしますが、どうしたんでしょう。
今回は、あのお魚の形の調味料入れの誕生から現在までについてお伝えします。
お魚型のたれ瓶はこうして生まれた
お弁当を買うと必ず入っていた魚の形をしたポリ容器。瓶の形のものもありますが、印象的だったのはやはりウロコまで精密に表現されているお魚の容器。これら使い捨ての調味料用のポリ容器は「ランチャーム」と呼ばれるものです。
作っているのは大阪市の株式会社旭創業で、開発したのは創業者・渡辺輝夫氏でした。
◆創業者・渡辺輝夫氏
渡辺氏は、どうしてランチャームをつくろうと思ったのでしょうか。
1954(昭和29年)のことだったといいます。
渡辺氏は経済新聞を隅から隅まで読んでいたとき「これからは経済的なポリエチレンの時代になる」との考えが頭をよぎったそうです。
当時使われていたお弁当用の調味料入れといえばガラスや陶器ときまっていました。
それらは風情も高級感もありましたが、割れる危険性をはらんでいました。
また、コストも高くつくという問題点がありました。
しかし「ポリエチレンであれば安くて安全なものを作れるし絶対に売れる」…そんな思いが渡辺氏をランチャームづくりへと駆り立てたのです。
けれども、ポリ容器をつくろうといったところで、渡辺氏にはその技術がまだありませんでした。
そこで、ポリ容器をつくるための機械づくりがまずは必要に。
長い台の上に延板をはめ込み、そこへ直径2cm足らずのポリエチレンチューブを流し込み、おしょうゆを注入して切断する試みが毎日繰り返されました。
現代であれば簡単な技術かもしれませんが、当時はまだ大変な苦労を要したのです。
失敗はなんども重なりましたが、渡辺氏はくじけず挑戦と改良を続けたのです。
そうしてついに満足のゆくものができる日がやってきました。
その日、工場へ顔を出した妻に渡辺氏が差し出したものは、いっぱいに詰まったおしょうゆが艶やかに光る容器。
断裁面も堅く密封され、おしょうゆがもれる心配もなさそうです。
いままでにない調味料の容器、そしてそれを量産するための機械が完成したのでした。
渡辺氏は「これは売れる!」との確信を持ち、さっそく特許庁へ出願することにしました。
商品名も「ランチャーム」に決まりました。