「ドラゴンボールよりドラえもんのほうがいい」頭のいい人がやっている”たとえ話”の絶対条件

「ドラゴンボールよりドラえもんのほうがいい」頭のいい人がやっている”たとえ話”の絶対条件

「ドラゴンボールよりドラえもんのほうがいい」頭のいい人がやっている”たとえ話”の絶対条件

ドラえもんを例える

わかりやすく伝えるにはどうすればいいのか。元駿台予備学校講師の犬塚壮志さんは「たとえ話を混ぜるとわかりやすくなる。ただし、たとえで用いるものは、老若男女だれでも理解できるものにしないと逆効果になる」という――。(第2回)

※本稿は、犬塚壮志『説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■ヘタな喩え話ほど逆効果になる

相手「喩(たと)えるとさ、このお客さんの案件って、ラフレシアだね」
自分「??」

相手が「喩えると、……」と言ったあとの話の内容がまったく理解できなかったという経験はないでしょうか?

あるいは、自分の場合に置き換えてみると、どうにか相手に理解してもらおうと喩え話を入れたにも関わらず手応えがまるでなかったり、相手が沈黙してしまったりしたことはないでしょうか?

このような「喩え」によるコミュニケーションミスに出くわしたことは誰しも一度や二度あるはずです。

私は長年、予備校受験生を相手に「化学」という科目を教えてきました。化学という科目は、目に見えない小さなレベルで物質を扱うため、説明に工夫が必要でした。

とっつきにくく、わかりづらい内容を比喩などを用いて噛み砕きながら伝えることが予備校講師にとって非常に重要な仕事でした。

現在は、企業向けの研修講師として登壇し、「喩え」なども含めた説明スキルを中心に講義を行なっています。

しかし、そんな私も予備校講師として駆け出しの頃は、安易に「喩え」を多用したばかりに悲惨な目に遭いました。

■「上手いこと言おうとしなくていい」生徒からの厳しいコメント

それこそ講義後の受講アンケートに、「喩えが意味不明」、「喩え話のせいで逆に混乱した」、「上手いこと言おうとしなくていいから、ちゃんと説明してほしい」といった厳しいコメントをいくつももらいました。

自分としては喩えを入れて上手く説明できたと思っていたのですが、実はそれがまったく生徒に伝わっておらず、むしろ逆効果になっていたのです。

もともと、「喩え」を上手く使って話したり書いたりできる人を知性的だと思っていて、自分も教える立場として知的に見られたい、そんな思いから「喩え」を多用していたのです。

しかし、生徒は正直なもので、私がいい加減に使っていた「喩え」に対して不満を抱いたのです。

本来、「喩え」とは、相手の理解を促すために用いる説明の技法です。相手にわかってもらうことを目的として使います。その一方で、わかりにくい喩えというのは、かえって相手を混乱させてしまうことにもつながります。

冒頭の「ラフレシア」の喩えがわかりやすいでしょう。「ラフレシア」というのは世界最大の花で、5日間ほどしか咲かないため「幻の花」とも呼ばれています。また、悪臭を放つ寄生植物としても有名です。

ただ、花好きの人はともかく、ラフレシアを知っている人はそこまで多くない可能性があります。

そのため、「ある仕事が、これまでにないほど大きな案件でなかなかもらえない依頼だけども、その分、リスクの高い危険な案件である」ということを伝えたくて、「この仕事って、ラフレシアだね」と言い表しても、相手を混乱させてしまう可能性が出てきてしまうわけです。

それでは、どのようにすれば、「喩え」を上手く用いた説明ができるのでしょうか。

■喩えるときは「特徴」に注目

そもそも「喩える」とは、「説明したいものと似た特徴を持つものを、他のフィールドから借りてくること」です。

つまり、上手く喩えるためには、説明したい物事の特徴を正確に抽出することが重要です。

たとえば、化学の講義で硫酸と酢酸という酸の強さを比べるとき、「硫酸のほうが酢酸より圧倒的に強い」と言われても、どれだけ強さに差があるかイメージが湧かないかもしれません。

でも、「同じネコ科であるライオンシャムネコくらい強さは違う」と加えるとイメージが湧きますよね。

これは「2者間の桁違いの強さ」という特徴を抽出して喩えたのです。

これを「ライオンシャムネコ」ではなく、「トラとヒョウ」で喩えたら2つの強さの差が少しわかりにくくなってしまいます。「トラとヒョウ」からは「2者間の桁違いの強さ」という特徴を抽出できていないのです。

ここで、「喩え」を使って説明する際の、相手に正確に理解してもらいやすい説明の組み立てステップを紹介しましょう。

■わかりやすく伝えるための話の組み立てステップ

そのステップというのは、以下の4つの手順で伝える内容を組み立てていきます。

Step1 正確な定義や情報を伝える
Step2 相手が知っているであろうフィールドを示す
Step3 そのフィールドで似た特徴を持つものに喩える
Step4 正確な定義や情報を、簡潔にもう一度繰り返す

1つずつ説明していきます。

Step1では、まず、「喩え」を入れないオリジナルの情報を正確に伝えます。ここは、正確さを優先すべく、多少、堅いフレーズで説明しても問題ありません。

Step2では、どのようなフィールドで喩えるのかを示します。「これによく似た構造が、身の回りの人間関係にも潜んでいます」のようなフレーズを使います。なお、このステップは単独のフレーズで用いずに、「これを、花で喩えると、……」のように、Step3のフレーズセットにして用いてもOKです。

Step3では、実際に喩えた内容を伝えます。繰り返しになりますが、わかりやすい喩えを見つけるコツは、わかってもらいたいことから特徴を抽出して、その特徴と似たような特徴を持つものを探すことです。

Step4では、Step1で伝えた内容をコンパクトにして、もう一度繰り返します。説明を喩え話で終わりにしないということです。

実は、過去に予備校で講義をしてきた中で、会心の喩え話を伝えただけで満足してしまい、このステップを行わないときがありました。

そんなとき、生徒にそのときの講義で覚えていることは何かと尋ねたら、「ジャイアンのび太がいました」と、ものの見事、喩えた部分しか覚えていなかったのです。

それ以降、喩え話がウケたことで盛り上がった相手のボルテージを下げることになったとしても、必ず最後に「喩え」を用いないオリジナルの情報を正確に伝えるようになりました。

■「ドラゴンボール」より「ドラえもん」がいい

例えば、職場における「エンゲージメント」という用語をこの組み立てのステップを踏んで作った喩えの事例が、次のようになります。

Step1 「エンゲージメントとは、簡単に言うと、個人と組織の双方の関係性や思いのことです」
Step2 「身近なもので喩えてみますね」
Step3 「エンゲージメントとは、磁石のN極とS極のように互いに引きつけ合う性質のものです」
Step4 「つまり、一方向的なものではなく、個人と組織が互いに貢献したいと思う双方向の関係性のことです」

最後に、「喩え」を用いるときに重要なポイントをお伝えしておきます。それは、相手が高確率で知っているもので喩えることです。

裏を返せば、相手が知らないものや未知のワードを用いて喩えても、理解してもらえず、逆に混乱を招く可能性が高くなるということです。冒頭の「ラフレシア」のように相手にとって未知である可能性が高い単語を使って喩えてしまう場合です。

例えば、何かの2つの物の強さの比較をする場合、「喩えると、同じサイヤ人でもベジータラディッツくらい強さは違うよ」と説明されても、『ドラゴンボール』というアニメを知っている人しかこの喩えは理解できないはずです。

そのため、同じアニメでも、「ジャイアンのび太くらい強さは違うよ」のように、幅広い世代で老若男女とわず相手が高確率で知っているであろう『ドラえもん』を選ぶほうが無難でしょう。

■みんなが知っている「喩え」以外は意味がない

「喩え」で用いるものは、相手が高確率で知っているであろう動植物などの生き物メジャースポーツ、あるいはほとんどの人に経験のある学校周りのことがおすすめです。

例えば、「強靭(きょうじん)な力の強さ」を喩える場合、生き物であれば百獣の王である「ライオン」、学校周りであれば「ガキ大将」や「番長」、野球であれば「巨人軍」などです。

「喩え」を用いた説明は、相手に瞬時に理解してもらいやすい反面、混乱を招く危険性もはらんでいます。

「喩え」を用いる場合には、特徴を正確に抽出し、前述の組み立てのステップを試してみてください。そうすれば、必ず知的な説明ができるようになるはずです。

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犬塚 壮志(いぬつか・まさし)
教育コンテンツプロデューサー/士教育代表
福岡県久留米市生まれ。元駿台予備学校化学科講師。大学在学中から受験指導に従事し、駿台予備学校の採用試験に25歳の若さで合格(当時、最年少)。駿台予備学校時代に開発した講座は、超人気講座となり、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一となる。2017年、駿台予備学校を退職。独立後は、講座開発コンサルティング・教材作成サポート・講師養成・営業代行をワンオペで請け負う「士教育」を経営する。著書に『あてはめるだけで“すぐ”伝わる 説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)、『理系読書 読書効率を最大化する超合理化サイクル』(ダイヤモンド社)がある。

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※写真はイメージです – 写真=iStock.com/mokuden-photos

(出典 news.nicovideo.jp)

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