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北京五輪女子団体パシュート 高木菜那まさかの転倒「北京の悲劇」の裏に〝コロナの影響〟と〝新戦術〟
東スポWeb
悔しい銀メダル。セレモニーでも高木菜那(右)の涙は止まらなかった(東スポWeb)
最後に〝落とし穴〟が待っていた。北京五輪のスピードスケート女子団体追い抜き(パシュート)の決勝(15日、国家スピードスケート館)で、平昌五輪金メダルの日本は高木菜那(29=日本電産サンキョー)が最終コーナーでまさかの転倒。カナダに逆転されて銀メダルとなった。2連覇目前の「北京の悲劇」に関係者やファンから悲鳴が上がった中、いったいリンク上では何が起きていたのか? 衝撃の展開となったレースの舞台裏を徹底追跡した。
最終コーナーで転倒した高木菜那
こんな結末を誰が想像しただろう。高木美帆(27=日体大職)、佐藤綾乃(25=ANA)、高木菜の布陣で臨んだ日本は「世界一美しい」と言われる隊列を形成。序盤からリードを奪ったが、中盤以降にカナダの猛追を受けた。ラスト1周で壮絶なデッドヒートとなり、最後のコーナーに差しかかったところで高木菜はバランスを崩し、転倒してしまった。
レース後、高木菜は泣き崩れた。妹の高木美、佐藤が寄り添って慰めたが、涙は止まらず「転ばなかったら優勝できたかもしれない」と自らを責めた。スピードスケート関係者の間も「言葉にならない」「衝撃的すぎる」と動揺が広がった。
いったいなぜ悲劇は起きたのか? 佐藤の恩師で元日本代表コーチの入沢孝一氏(現・高崎健康福祉大スピードスケート部監督)は「おそらく本人たちも最後の半周で決まるということは理解しながら滑っていたと思うが、最終コーナーのカーブでちょっと体を支えきれなくなってバランスを崩して、高木菜那選手が転倒してしまいました。本当にギリギリの体力の中で戦った結果だと思います」と振り返った。
集団で滑るパシュートには、個人戦とは全く異なる難しさがある。「3人で先頭交代する形なので、個人で滑るよりも速いスピードになるんですよね。それだけ体に負荷がかかることになります」(入沢氏)。この日は準決勝、決勝の2本。スピードを求める上で、少なからず体への負担はあったはず。入沢氏も「カーブの時にスケートの選手は『足に来た』って言うんですけれども、足がパンパンに張って自分の体を支えられないぐらい体力を消耗している状態で最後の1周を回っていたんだと思います」と指摘した。
一方、妹の高木美は「もっと最初の方で何かできたんじゃないか」と姉をかばいつつ、会見では「2シーズン前にパシュートを滑る機会がグッと減ってしまった。私たちがもっと考慮して、突き詰めるためには他で補わなきゃいけなかった」と本音を打ち明けた。昨季は新型コロナウイルスの影響で海外での実戦はなし。個々の能力が際立つ他国とは違い、緻密な〝組織力〟で勝負する日本にとってコロナ禍は大きな痛手となった。
さらには、打倒日本に燃える海外の強豪国は新戦法を続々と導入。先頭の交代回数を減らすだけでなく、前の選手の尻を手で押す「プッシュ戦術」が主流になりつつある。日本も時代の波に乗り遅れまいと取り入れたが、皮肉にも高木菜がバランスを崩したのは前の佐藤を押した瞬間だった。実戦不足の中で敢行した新戦術がアダとなってしまったのか…。
表彰台の頂点には立てなかったが、高木菜は連覇がかかるマススタート(19日)、高木美は金メダルを狙う1000メートル(17日)が控える。高木姉妹をよく知る関係者は「もちろん引きずるなっていうのは難しいかもしれないですが、そこは考えずに頑張ってほしいですよね」と奮起に期待した。五輪史に残るであろう「北京の悲劇」となったが、この日の敗戦を糧に有終の美を飾りたいところだ。
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