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【対談】阪神藤浪晋太郎が鳥谷敬氏に伝えた自信「悩みの次元が変わりました」
悩みのステージ、上がりました-。阪神藤浪晋太郎投手(27)が沖縄・宜野座キャンプで日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(40)と対談し、復活へ自信をのぞかせた。
節目でアドバイスをもらってきた大先輩から「ロングストッパー」への適性を提案されると、先発マウンドにこだわる理由も熱弁。その表情と言葉を確認した鳥谷氏からシーズン15勝を期待された。【取材・構成=佐井陽介】
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鳥谷氏 久しぶり! 日本ハム戦(11日)の映像を確認させてもらったけど、感じは良さそうだね。
藤浪 お久しぶりです! まだ肩の開きを抑えたいとか課題はあるんですけど、この時期にしては良いかなと思います。
鳥谷氏 この時期にもう微調整の段階に入れているだけでも良いね。日本ハム戦では死球を当てた後の姿を見ていたけど、ここに去年までとの違いを感じた。修正が利かない1球があった後もスッと戻ってきた。
藤浪 ここ数年は感覚自体が良くなくて、ちょっと悩みのレベルが低かったんです。でも、今年はそこそこ抑えている中で「もうちょっとこうしよう」という次元で悩めています。日本ハム戦で抜け球があった後も全然気になりませんでした。状態はここ数年にないぐらい良い感じです。高い次元で悩めていることが良いなと思っています。
鳥谷氏 日本ハム戦では変化球も多く投げていた。序盤は直球が多いイメージだったから驚いた。
藤浪 初回はバントの構えばかりだったので、ちょっと真っすぐが多くなったんですけどね。真っすぐが速いから真っすぐを真ん中にドンというのもありなんでしょうけど、それだけでローテーションを守り続けるのは難しい。フルカウントからスライダーとか変化球でストライクを取れてこそゲームを作れる。その辺を課題にしています。いろんな球種でストライクを取れるようにしていきたいと思っています。
鳥谷氏 中継ぎを経験して得たものもあるのかな。
藤浪 中継ぎは先発よりも失敗できない。先発であれば多少ヒットを打たれても、1発を浴びても、まだ大丈夫という感じでいられます。ただ、中継ぎだと1球、ヒット1本によりシビアになりました。あとは自分が作ったゲーム、流れではないところに入っていく点がちょっと特殊でした。先発と中継ぎでスタイルが変わったかといえば、そうでもないですけどね。
鳥谷氏 1月には巨人の菅野投手とも自主トレしていたね。軸足の使い方も教えてもらったとか。学んだモノは多かったのかな?
藤浪 はい。1回自主トレをさせてもらっただけで劇的に変わるかと言われれば、そう甘いものではないと思います。それでも「そうか、自分はそういう体の使い方をしていたよな」と戻っていけるヒントをもらえたので本当に良かったと思っています。
鳥谷氏 今はWBCとかでも他球団の選手と会う機会、話す機会が増えているからね。長く活躍している人には必ず理由がある。いろんな人から勉強するのは良いことだと思う。そういえば、今年は先発へのこだわりもよく口にしているね。自分が見ている分には「長いイニングを投げられる抑え」という新しい形も見えたりしている。晋太郎の性格は意外と抑え向きなんじゃないかと勝手に思ったりもする。晋太郎は大胆にいきすぎて打たれるよりは慎重にいくタイプ。それに空振りを取れるし、打者に怖さを与えられる。9イニング制のままであればまた話は違うけど、今年は延長12回まである。2イニング、3イニングを投げられる投手が後ろにいると、すごく助かるかなと個人的には感じている。どうしても先発にはこだわりがあるの?
藤浪 絶対、というわけではないです。先発はもちろんしたいし、枠を奪いにいきます。でもその途中で「藤浪、もう先発はないから中継ぎをやってくれ」と言われたら、中継ぎでやらせてもらうしかないですからね。でも、自分の中では中継ぎで成績を出せる状態ならば先発でも成績を残せると思っています。逆に先発で成績を残せないから中継ぎに回って成功するとも思えない。それならば先発をやらせてもらいたい、という意味で言葉にしています。そうしないと、去年のように中途半端になってしまいそうだと思ったので。
鳥谷氏 数日前のテレビインタビューでも先発で7回、8回を投げたいと言っていた。中継ぎが背負っているプレッシャーも経験できたからこそ、あらためて先発の重要性に気付けたのかもしれないね。
藤浪 この1、2年で中継ぎでマウンドに上がる感情はすごく理解できました。準備の大変さも感じましたし、先発が長いイニングを投げてくれるありがたさも痛感しました。そういう経験をしたから、また先発をやりたいと思えたのかもしれません。自分は長いイニングを投げることができるタイプだと思っていますし、スタミナが一番の売り。そこでチームに貢献したいと強く思っています。
鳥谷氏 少し話は変わるけど、自分が現役をやっていた時と違って、今は「メジャーに行きたい」と自由に言える時代になっているよね。年代が近い選手たちが挑戦しているし、晋太郎より若い選手も挑戦したいという気持ちを言ったりしている。もちろんまずはタイガースで成績を残さないといけないし、タイガースで結果を出してからの話だけど、いつかはメジャーに挑戦したいという気持ちはないの? 自分の場合は阪神に入団した時から「メジャーに行きたい」と思ってやっていたし、仲間にも言っていたんだけど。
藤浪 正直なところ、ここ数年は成績を残せていないし、あまりそういうことを言うのもどうかなとは思うので、大きな声では言っていないんですけど、そういう気持ちは持ち続けています。メジャーはやっぱり世界最高峰だと思うので、ベースボールというものを体感してみたい気持ちはあります。もちろん、今はタイガースでしっかり結果を残すことが第一ですけど、いつかそういうところでプレーしたいという気持ちもモチベーションの1つとして頑張れているのかなとも思います。
鳥谷氏 もちろん今年に関しても優勝に懸ける思いとか個人目標はあるのだろうけど、その先に大きな目標があれば、嫌なことが起きた時も大したことではないと思える。目標があれば、そこに向かうためにはどうしないといけないとか、今やるべきことや条件が見えてくる。行きたいという目標は大事にしてほしい。それにしても、今は「試合で負けたらどうしよう」「打たれたらどうしよう」「ストライクが入らなかったらどうしよう」ではなくて、その1歩先に行けているような印象だね。この2、3年はあまり話す機会もなかったけれど、投げさせてもらえなくなったこと、中継ぎに回ったこと、苦しさもたくさんあったと思う。そんな期間を経て、今後ブレない準備が整ったような気がする。今年は間違いなく活躍できると、個人的には感じる。
藤浪 ここ数年にない手応えというか、これならやれるんじゃないかというものは感じています。このまま普通にオープン戦でも投げていければ、これで使ってもらえないのであれば仕方がないと思えるぐらいの感覚はあります。もちろん手応えを数字でも残せるようにしなければいけないのは当然ですけど、周りを納得させられるボールを投げていきたいと思えるぐらい状態はいいです。
鳥谷氏 オフの間に食事だったりメンタルだったり、今までと意識を変えた部分もあったのかな。
藤浪 今年新たに取り組んでいるのは足裏、手のひらのセンサーというか…。母趾(ぼし)球でいかに地面をとらえられるかに特化したトレーニングもやっています。今はそれがとても良くて、足裏で地面をとらえる感覚がすごく出てきています。
鳥谷氏 スパイクを履いていても、地面の感じ方は大事だからね。自分も現役時代は立った状態で足裏だけで進むトレーニングとかをしていた。足はどうしても着くことばかりで、次第に曲げる重要性を感じなくなって鈍くなってくるもの。逆に手は閉じることばかりだから開く練習をしてみたり。そういう部分って意外にちょっとずつ感覚がズレていたりするからね。そういうところにも目がいくようになったのも、すごく良いかなと感じる。
藤浪 まだ20代ですけど、30歳が近くなってきて、10代の頃と比べたら足元の感覚も気付かないうちに落ちてきているように感じていました。実際にトレーニングをすると良くなっているので、やはり多少は落ちていたのかなと思います。やってみた感じが良いので、これからも継続していきたいと思っています。
鳥谷氏 キャンプも中盤から終盤に入っていくけど、今後の調整はどう進めていきたい?
藤浪 前の日本ハム戦で投げていて、もうちょっと肩の開きをなくして、上下の割れというか捻転差を作っていきたいと思いました。まだ若干バッターをのぞきにいってしまうことで、多少腕が遠回りしたり、ちょっとボールが抜けたりする。もちろんここ数年と比べたら抜け方も知れていますけど、もうちょっとボールをつかまえたい。そこさえできれば、と思っています。あとは力まないことですね。力んで肘が遠回りして出てくるとダメなので。結果が欲しい、抑えたいところでそうなってしまわないように、というのが開幕までの課題になりますね。
鳥谷氏 話を聞いていると、だいぶ状態は良さそうなんだね。
藤浪 悩んでいる次元は少し変わりました。良かったけどもう1つこうしたい、ああしたいと思える状態にはなりました。ここ数年は「どうしたらストライクが入るかな」「抜けへんかな」ということばかり考えていました。そういう状態を思い返せば、今はまともに野球ができています。ピッチングができています。
鳥谷氏 開幕投手…とは言わないけど、まずは開幕ローテ入りだね。
藤浪 なんとか奪い取らないといけないです。枠がもう…。青柳さん、秋山さん、西(勇輝)さん、伊藤将司、ガンケル、(左肘手術明けの)高橋遥人も開幕に間に合うかもしれません。もしかしたら、もう5・5枠は埋まっているかもしれない状況なので。
鳥谷氏 実力や実績、バランスを考えたら、晋太郎が普通にできれば、その中でも一番勝つことができる力は持っていると思う。
藤浪 本当にベストのパフォーマンスができれば、と思っています。
鳥谷氏 ベストパフォーマンスを出せれば15勝できる力はある。たとえば28試合ぐらいに投げて15勝8敗、200に近いイニング数も見えてくる。正直なところ去年、一昨年はそういうところまでは見えてこなかったと思うけど、今はそれが見えるだけでも良い。日本ハム戦の中継をチェックさせてもらった時は、プロ入り直後に晋太郎の後ろで守っていた時の感覚を思い出して、ここでこういう球を投げて、今度はこっちを修正するんだなというところを見ていた。守っている自分をイメージしながら画面で見ていて、こんな投球を続けられれば年間これぐらいは勝てるなというイメージができた。すごく頼もしく感じた。あとは練習中の走っている時に誰かとぶつかるとか、ケガだけは気を付けてね。体に新しい感覚が出てきて力強さも出てきたりすると、今まで感じたことがなかった箇所から疲れが出てきたりもする。そういったケアにも気を付けてくれれば…間違いないんじゃないかな、今年は。
藤浪 やれそうだなという手応えは個人的には感じています。ここから自分がブレなければ、「あれっ、あれっ」とならなければ、ですね。今は立ち返られる場所があります。ちょっと「あれっ」と感じても戻せるかなとは思っています。
鳥谷氏 今は修正点にしても明確なものが見えている。そうなれば、悪い時でもそこを修正することに集中できて、周りのことが気にならなくなる。それができていれば大丈夫。今年も頑張ってね!
藤浪 ありがとうございます! 頑張ります!
◆藤浪の11日練習試合日本ハム戦 先発し3回1安打無失点。1回は3者連続セーフティーバントの奇襲に動じず、ゴロ、三振ときて3番宮田をこの日最速159キロで見逃し三振。2回1死から石井二塁打の後は佐藤、梅林を打ち取り、3回1死から樋口に死球を与えても、上野一ゴロ、片岡三振と冷静に後続を断った
▼阪神の投手が直近に年間15勝と200投球回を同時に満たしたのは、03年井川の20勝、206イニング。日本人右腕なら81年小林が最後で、生え抜き右腕なら74年古沢までさかのぼる。達成回数の最多は9度で、1リーグ時代に若林、2リーグ分立後の小山、村山、江夏。球界の直近では、18年に巨人菅野が15勝を挙げ202イニングを投げた。
【対談】阪神藤浪晋太郎が鳥谷敬氏に伝えた自信「悩みの次元が変わりました」 https://www.nikkansports.com/baseball/photonews/photonews_nsInc_202202140001124-0.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp …
ふぁっ???