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北朝鮮で30年間撮りためた写真展「平壌の人々」 大阪で19日から
平壌市内にある遊泳場のウォータースライダーには長い行列ができていた。金正恩体制になり、大規模な娯楽施設が次々と建設された=2019年7月、伊藤孝司さん撮影
北朝鮮で暮らす一般市民に焦点をあてた写真展「平壌の人々」が19日から大阪市生野区で開かれる。撮影したのは三重県在住の写真家、伊藤孝司さん(70)。日朝関係の改善が見られず、北朝鮮によるミサイル発射実験が相次ぐ中、伊藤さんは「こんな時期だからこそ、私たちと同じような市民が暮らす国という事実を知ってほしい」と話す。
伊藤さんは、アジアを中心に約200回の海外取材を経験。北朝鮮には1992年以降、43回現地入りして取材を重ねてきた。元従軍慰安婦や広島・長崎で被爆後に帰国した北朝鮮の人たち、戦前または戦後に現地に渡って残留する日本人ら、国籍を問わず歴史に翻弄(ほんろう)されてきた市民にレンズを向けてきた。
平壌市内の地下鉄車内で、隣に乗り合わせた親子。周囲の乗客たちが優しい眼差しでこちらを見ていた=2019年5月、伊藤孝司さん撮影
しかし、新型コロナウイルス感染拡大で海外取材が困難に。これまで撮りためた写真を整理したところ、テーマ別に発表したもの以外に、普通の市民をとらえた写真が多数あることに気づいた。このうち首都平壌(ピョンヤン)や地方都市、農村で撮影した100枚を選び、昨夏以降、東京や京都など各地で写真展を開いてきた。
北朝鮮での取材は、通訳を兼ねた当局の職員が常に同行し、取材の規制も多い。それでも「テーマによっては政治情勢で判断が変わったり、交渉次第でOKになったりすることもある」という。
平壌中心部でハクサイを山積みして走るトラック。日焼けした協同農場の農場員たちが乗っていた=2014年4月、伊藤孝司さん撮影
強権的な体制で知られる国だが、長年の取材で社会の変化を感じることも。地方の農村ではいまだに貧しい地域も残るが、都市部では働く女性が増え、街中で総菜を売る店が増加。地方でも若者の結婚式が派手になり、一定の経済発展を感じるという。
北朝鮮についてメディアを通じて伝わる情報は、政治や外交に絡んだ否定的なものが多い。伊藤さんは「政治体制は違っても、現地で暮らす一般市民は、私たちと同じような悩みを抱えたり、喜びを感じたりする人たちばかり。そうしたことを写真を通じて感じ取って、隣国とのつきあい方を考えてほしい」と話す。
写真展は27日まで、午前11時~午後6時。平日は午後3時、土日は午後2時に伊藤さんの解説がある。会場は生野区新今里2の「旧辻本写真館」。問い合わせは「猪飼野セッパラム文庫」の藤井幸之助さん。【鵜塚健】
毎日新聞 2022/2/9 17:17(最終更新 2/9 17:21) 913文字
https://mainichi.jp/articles/20220209/k00/00m/040/166000c