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元公安警察官は見た 蓮池さんを拉致した「北朝鮮スパイ」はどこで“背乗り“する日本人を物色したか
「西新井事件」の主犯、チェ・スンチョル(警視庁HPより)
日本の公安警察は、アメリカのCIAやFBIのように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁へ入庁後、公安畑を17年勤め、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、2人の日本人になりすまし、蓮池薫さんと祐木子さんを拉致した北朝鮮工作員について聞いた。
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十数年間も日本人になりすまし、旅券の偽造や日本人拉致などを行ったのが、1985年3月に発覚した「西新井事件」の主犯、チェ・スンチョルである。
「彼は2人の日本人に背乗り(スパイが正体を隠すために、実在する他人の身分・戸籍を乗っ取って、その人物になりすます)した、戦後史に残るスパイです」
と語るのは、勝丸氏。
チェは1970年8月、石川県能登半島羽根海岸から日本に密入国した。戦前、日本に住んでいたことがあり、日本語を流暢に使いこなしたという。密入国後、大阪在住の在日朝鮮人、金錫斗(キム・ソクト)を土台人(北朝鮮人の工作員が活動の拠点として利用する人間)にした。
山谷地区で接触
「その後、東京の西新井に居を構え、『松田忠雄』の名前で都内のゴム製造会社に勤務します。真面目な社員を装っていたそうですが、工作活動の手助けをしてもらうために大阪から金を東京に呼び寄せ、自宅近くに転居させています」
ゴム製造会社に勤務して1年後、夫を亡くし、3人の子どもを抱えてパートで勤務していた同僚女性と同棲を始めた。
「チェは、女性と3人の子どもを連れて家族旅行と称し、1971年から80年にかけて秋田県男鹿半島、京都府丹後半島、静岡県熱海市、東京都伊豆大島、石川県能登半島、九州・日南海岸などの地形をカメラやビデオで撮影していました。日本人を拉致するための下見をしていたのです」
能登半島では海岸にテントを張り、家族と共に1週間滞在。海岸線を念入りに撮影して、画像を北朝鮮に送った。
チェが日本人に背乗りしたのは1972年7月。東京の山谷地区(台東区)で、病気で今にも倒れそうだった福島出身の小熊和也さんを介抱して、病院に入院させた。
「小熊さんはチェのことを完全に信用していました。入院させてから10日後、チェは自分が船会社の社長であると身分を偽り、退院したら自分の会社に採用する、その気があるなら入院費用はこちらで負担すると持ちかけたのです。小熊さんは疑うことなく了承しました。すると翌日、チェは金錫斗と一緒に小熊さんの実家に行き、本籍地が福島だと不便なので東京に移して欲しいと頼み、転籍をさせました」
デイリー新潮編集部
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/02011100/