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中国・西安『人災じゃないゼロコロナ』 都市封鎖2週間以上
【北京=中沢穣】新型コロナウイルスのわずかな感染も徹底的に抑え込もうとする「ゼロコロナ」を掲げる中国の陝西省西安市で、2週間以上続く都市封鎖に伴う感染対策が、過度に厳格で一律的だとして、市民から不満が出ている。
食料が行き渡らない状況が続くほか、病院に入れずに妊婦が死産した悲劇も起きた。同市在住のフリー女性記者、江雪こうせつさんはネット上の文章で「本質的には人災だ」と訴える。
◆「命を守ることなのに命を喪失している」
「防疫の目的は命を守ることなのに、西安での過度な防疫対策は命の喪失につながっている」
取材に応じた江さんの友人によると、江さんは
「非合理的で官僚的な疫病対策」への怒りを口にし、
「多くの庶民が内心では憤怒を抱え、責任を追及したいと考えているはずだ」
と話しているという。
ネット上では、妊娠8カ月だった女性の死産が注目を集めた。
同市在住の女性は1日に腹痛を訴えて病院を訪れたが、PCR検査証明の期限が4時間切れているとして、厳寒の屋外で2時間待たされた末、出血して死産した。
心臓病を抱える男性が病院に診察を拒まれ、死亡したケースもあった。
死産については病院関係者らが処分され、6日には同市の衛生部門トップが謝罪した。
また、江さんの文章などによると、食料などが行き渡らない事態も一時、深刻化した。
都市封鎖によって市民が外出できなくなり、スーパーや市場など流通がストップしたためだ。現在はボランティアの活躍などによって改善傾向にあるが、都市封鎖によって建設現場に閉じ込められたままの労働者や行き場を失ったホームレスなどに、なおも食料が届いていないという。
江さんは文章で
「(当局は)われわれは勝利のために一切の代価を惜しまないというが、庶民は『われわれ』の側なのか、『代価』の側なのか」とつづる。
江さんの文書は、2年前に湖北省武漢市が都市封鎖された際に当局への疑問などを記した女性作家、方方(ファンファン)さんの日記になぞらえ、「西安版武漢日記」としてネット上で拡散した。しかし当局は批判の封じ込めに躍起となっており、文章は次々と削除されている。
《感染対策のため封鎖された居住区=3日、中国陝西省西安市(共同)》
東京新聞 2022年1月7日 22時40分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/153003