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【パヨク】「独りじゃなかった」SEALDs元メンバーの大学院生・是恒香琳さん「活動は確かに引き継がれている」
<新年連載・声を上げて~デモのあとさき②>
◆かつて仲間はいないと感じていた…
「戦争やめよう」「民主主義って何だ」。東京都内の大学院生、是恒香琳(これつねかりん)さん(30)は仲間とともに汗だくになって声をからした、あの夏の熱気を鮮明に覚えている。
2015年8月、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法案の審議が国会で続いていた。当時大学生の奥田愛基(あき)さんらが結成した「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」のメンバーとして毎週金曜日のデモに参加していた。
抗議のピークは30日。日曜日だったにもかかわらず周辺駅から国会に向かう人の波は途切れなかった。歩道は言うに及ばず、国会正面の車道まで人で埋め尽くされた。
かつて仲間はいないと感じていた。
11年の東京電力福島第一原発事故後、「何かしなければ」との思いに駆られ、大学内で原発関連の写真展を企画。友人らを誘ったが、反応はいまひとつ。政治の話題を振ると「そんな話はしたくないな」「もっと地に足を着けた方がいい」と疎まれた。
孤立感を深めていた14年秋、シールズ結成前の奥田さんらが手掛けた特定秘密保護法に反対するデモをのぞいた。政治への不満、もどかしさを訴える仲間と出会い、初めて「独りじゃなかった」と思えて、活動に加わった。「多くの人と出会って、異なる意見も聞き、困ったら支え合うようになった」
◆ここには考え方が違う多様な人たちがいる
国会前で初めてマイクを握った時、「おせんべい屋さん、デザイナーさん、女性、若者、障害がある方。ここには考え方が違う多様な人たちがいる」と、さまざまな境遇の仲間が一堂に会する意義を訴えた。
洗練されたデザインのプラカードと軽快な音楽、若者たちが語る等身大の言葉。シールズのデモは全国で模倣され、法案に反対する世論はうねりとなっていった。しかし、与党などは採決を強行して安保法は成立した。
その後、シールズは解散し、政治的な活動から離れた仲間もいる。是恒さんは、女性をテーマに月刊誌にコラムを書いたり、勉強会に参加したりして、ジェンダーの問題を中心に発信を続ける。
会員制交流サイト(SNS)や動画配信など、自らの思いを伝える手段がさらに広がった今、政治や社会の問題意識を語る若い世代は珍しくなくなった。18年に財務官僚のセクハラが発覚した時は被害者を支えようと、素顔を出して意見表明する動きが相次いだ。
高等教育の無償化やSDGs(持続可能な開発目標)など、若者らによる活動のテーマも多様化。政治家や政府機関に直接、意見を伝える姿も見られるほか、21年衆院選では若者が同世代に投票参加を呼び掛ける活動が盛んに行われた。
「15年は私たちを見て驚く人が多かったが、今は声を上げることが当たり前になってきた。私たちの活動は、確かに引き継がれている」(大野暢子)
東京新聞 2022年1月3日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/151961