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児童の4割が外国ルーツ、どうすれば「共生」できるのか 「違うのが当たり前」大阪・西成の小学校…日本語教室で互いに「知ってみよう」
2025/12/01
Published 2025/12/01 11:00:00
Updated 2025/12/01 12:18:46
日本に住む外国人が増える中、その子どもたちへの日本語教育が課題となっている。大阪市西成区では10年前と比べて、外国人住民の数が倍増した。ある市立小学校では、児童の半数近くが外国にルーツを持つ。日本語が理解できず授業について行けない児童もいることから、地域の支援団体と連携し、放課後に校内で日本語教室を始めた。
異なるルーツを持つ人々と共生していくにはどうすればいいのか。「労働者の街」として知られた西成の小学校で、一歩踏み出した子ども向けの日本語教室の取り組みをリポートする。(共同通信=姜寿麗)
▽学校の対応に限界
「一つだけ違うものが混ざっています。分かりますか」
7月のある火曜日の放課後。西成区の市立北津守小学校で、日本語教室のスタッフの田中敬子さん(45)は、中国にルーツを持つ2人の子どもたちにやさしく日本語で話し始めた。この日は日本語訳された中国の絵本を使った。
北津守小は児童105人のうち、約40%の43人が外国籍または親が海外出身など外国にルーツを持つ。今後、全児童の半数に上る可能性があるという。出自は中国やベトナムなどさまざまで、日本語の読み書きや話すレベルも児童によって差が激しい。教員ら学校のマンパワーだけでは一人一人への対応に限界があった。
▽地域と連携
この現状を改善しようと、地域の支援活動を続けている一般財団法人ヒューマンライツ協会(西成区)と連携。2年前から、日本語教室「知ってみよう会」を学校内で週1回開いている。
放課後に、来日して間もなかったり、日本語になかなかなじめず、学校から参加を勧められたりした児童が集まる。小学校で開けば、子どもたちも授業が終わった後すぐに参加できる。「知ってみよう会」という名前は、「日本について知ってもっと世界を広げてみよう」という思いから名付けられた。
ヒューマンライツ協会で子育て・教育事業を統括する笹川勝正さん(43)はこう話す。
「子どもたちが家庭環境や出身、国籍の影響で十分な教育を受けられないと、将来の進路などを考える際に格差が生まれてしまう。日本語を話せるようになることで、子どもたちと日本社会との関わりが深まり、共生社会の実現につながるのではないか」
(中略)
▽ルーツにポジティブ
西成区の外国人住民は年々増加しており、2025年3月末で1万5446人と10年前に比べて倍以上に増えた。家賃が安く、働き先の大阪・ミナミの繁華街にも近いという立地条件もさることながら、「労働者の街」として以前から多様な人々を受け入れてきた地域性もあるとされる。
北津守小の校長は強調する。
「学校には自らのルーツにポジティブな児童が多い。国や文化による違いを日常的に感じているからこそ、子どもたちは違うのが当たり前と捉えている」
外国人児童の家族ともつながりを深めたいと考えており、「知ってみよう会」でも学習参観や日本食作りなど保護者を招いた交流会を開く予定だ。
▽取材後記
大阪市西成区では外国人住民の数が年々増加し、2024年12月末の時点で、外国人住民の比率が約14%と大阪市平均の約7%を大幅に上回っています。また、区内には日本語学校がいくつかあることから、街を歩いていても外国語がいたるところから聞こえ、外国人住民の増加が肌で感じられます。
そんな西成区で共生へのヒントが見つけられるのではないかと思い、学生時代に西成の日本語教室でボランティアをしていた経験から、外国ルーツの児童が多い小学校と地域が手を取り合って行う取り組みを取材しました。
取材では、一生懸命に日本語を学ぶ児童の姿が印象的でした。学校では「先生の話すことがたまに分からなくなる」という子も、ここなら自分のペースで日本語学習ができているようです。
学校と地域が役割を分担し、一体となって行う支援は、地域社会の一員である外国人住民との共生への一歩となるように感じられました。








