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【文春】第2の「レーダー照射事件」になる恐れも…韓国空軍の“竹島周辺訓練”で日韓防衛交流が中断
韓国空軍の曲技飛行隊「ブラックイーグルス」が10月28日、竹島周辺空域で訓練飛行を実施。日本政府は30日の日韓首脳会談の直前だった点なども考慮し、11月上旬、航空自衛隊那覇基地で実施するはずだったブラックイーグルスへの給油を中止した。
韓国軍も事実上の対抗措置として、13~15日に東京都内で開かれた「自衛隊音楽まつり」への軍楽隊派遣を中止。さらに今月予定されていた海上自衛隊と韓国海軍による共同救難訓練の実施も見送られた。両政府や軍の関係者に取材すると、様々な問題点が浮かび上がる。
■「訓練して当たり前の場所」「日韓会談とは関係がない」
(略)
■「ドバイエアショーから逆算し独島(竹島)周辺で訓練計画」航続距離が短く過去には台湾で給油も
※抜粋
また、T50は航続距離が短く、「釜山からフィリピンまで飛行できない程度」(自衛隊元幹部B氏)という。途中で給油が必要で、過去には台湾で給油していた。ただ、その都度中国から激しい抗議を受けていた。
このため、中韓関係を立て直したい李在明政権の意向もあり、沖縄での給油をお願いする方向になっていたという。自衛隊関係者は「ブラックイーグルスはドバイエアショーに参加したかった。当然、自分たちから日韓関係をぶち壊したい意図はなかったとみるべきだろう」と語る。
■現場判断で政治を混乱させた2018年の「火器管制レーダー照射事件」
というのも、韓国軍には現場判断で政治を混乱させた苦い経験があるからだ。2018年12月、韓国海軍駆逐艦「広開土大王」による海上自衛隊P1哨戒機への火器管制レーダー照射事件のことだ。
この事件は最終的に韓国軍がレーダー情報の提供を拒み、照射の事実はないと最後まで突っぱねて終わった。ただ、海自側には、レーダー照射を告げる警報がP1哨戒機で鳴るなど、客観的な証拠がそろっていた。事件直後、日本側の照会を受けた韓国国防部や軍合同参謀本部は事件の発生に驚く反応を示していた。こうしたことから、推論として、広開土大王の艦長が低空飛行するP1哨戒機にいら立ち、独自の判断でレーダー照射した可能性が高いとみられている。
この事件で、2022年5月に誕生した尹錫悦政権が日韓関係の改善に舵を切るまで、日韓防衛交流は停滞した。また、韓国は領土問題や歴史認識問題で日本に厳しい姿勢を示し続けている。その姿勢は理解もできるが、逆に自ら領土問題や歴史認識問題が浮上しないように神経を配るべきでもある。2018年事件を契機に、竹島周辺を訓練空域から外すなり、日韓の重要な政治日程と重なる場合は、大統領府や外交部と協議することを意識付けたりする努力が足りなかったと言えるだろう。
■将来の日韓ACSA締結に向けた一歩を逃す結果に
また、今回は自衛隊と韓国軍の間で物資を融通しあう物品役務相互提供協定(ACSA)締結に向けた重要な一歩を逃す結果になった。トランプ米政権が東アジアの安全保障を地域同盟国に任せたい動きを見せている今、日韓の防衛協力の強化は喫緊の課題と言える。日韓は2012年、ACSA締結の直前まで行ったが、当時の進歩(革新)勢力が猛烈に反対し、署名当日にキャンセルになった苦い思い出がある。航空自衛隊と韓国空軍は従来、相互訪問する際、ACSAがないため、民間業者と契約して補給を受けていた。
ところが、今回は日本側に「将来の日韓ACSA締結に向けた一歩としたい」(関係者)という思惑があり、自衛隊法の無償貸し付け規定を使い、自衛隊が直接給油支援することになっていた。自衛隊元幹部A氏は「那覇での給油が実現していれば、韓国軍にとってACSAの重要性を認識してもらえる良い機会になったのに残念だ」と語る。
■日本国内でのナショナリズムへの影響は
ただ、あえて言えば、前述したように竹島周辺空域での韓国軍の訓練は常態化していた。日韓ACSAの重要性を考えれば、ブラックイーグルスの訓練への抗議と給油支援を切り離して考えることもできたはずだ。高市早苗首相は給油実現にこだわったと報道されているが、防衛省・自衛隊の判断が、保守強硬派の支持を頼みとする高市政権への忖度だったのかどうかは確認できていない。
韓国は給油支援中止の事実上の対抗措置として、「調整がつかなかった」という理由で韓国軍楽隊の日本派遣と日韓共同救難訓練の実施を見送った。日本政府関係者によれば、韓国側はこれで一件落着とし、12月からは再び防衛交流を進めたいとしている。しかし、現在は日中関係の険悪化もあり、日本国内でナショナリズムが燃え上がりやすい状況になっている。交流がすぐに正常化できるかどうか、まだ予断を許さない。
文春 11/18(火)
https://bunshun.jp/articles/-/83722







