あわせて読みたい
韓国・現金2,000億ドル対米投資、造船1,500億ドルで対米交渉妥結――と公表。⇒ これは資金調達が無理スジなのでは
2025年10月29日、韓国の金容範(キム·ヨンボム)大統領室政策室長は、暗礁に乗り上げていた米韓関税交渉について、「超格差K-APEC」の舞台となっている慶州APECメディアセンターで記者ブリーフィングを開催。
「現金投資は2,000億ドル、造船業協力1,500億ドルで構成される」
「2,000億ドルの投資は一度に行われるのではなく、年間200億ドルの範囲内で事業進捗の程度に応じてドルで投資する」
「これはわが国の外国為替市場が耐え得る範囲であり、その影響を最小化できる」
(略)
その200億ドルはどうやって調達するのか――ですが、
(略)
外貨準備の運用益で200億ドルを賄うのは無理スジ
「毎年200億ドル」は、まず外貨資産(=主として外貨準備)の運用収益を充当し、不足分は政府保証債を「国際市場で」発行して賄う——という主張です。
国内のスポット外為市場でドルを調達しないので、短期的なウォン売り・ドル買い圧力を抑える設計です。
それはいいのですが、そもそも外貨準備の運用益で毎年200億ドル調達できるのか?――これが第一の疑問です。
Money1ではその都度、韓国の外貨準備高をご紹介していますが、直近2025年09月末時点では、韓国の外貨準備高は計4,220億ドルです。
Securities(証券類)が3,784億ドルで、現金たるDeposits(預金)が「185億ドル」の合計が「3,969億ドル」、これが運用益を生む原資になるとして約4,000億ドルです。
ここから毎年200億ドルの運用益が上がるとして、年利「5%」ないといけません。
この5%というのは、非常に無理スジです。なぜなら、そもそも外貨準備というのは「安全性」「流動性」を主眼に置かれており、『韓国銀行』自身が「利回りを追求するものではない」と明記しているぐらいです。
したがって、外貨準備を原資に運用益で賄うという企図にはそもそも無理があります。
つまり、必然的に「海外市場で政府保証債(外債)を発行して賄まかなう」となる可能性が高いです。
政府保証債券を発行して賄えるか? これも無理スジ
金容範(キム·ヨンボム)室長の「これのために国内市場への供給が増えることはない」は、債券を国内市場で発行することはないので、債券市場を毀損することはないという表明です。
これも重要なポイントで、政府保証債が債券市場に大量に出回るとニーズがそちらに傾き、他の債券発行体に資金が回らなくなる可能性があります。
ですから、国内の債券市場で政府保証債を大量に投入して買ってもらうわけにはいかないのです。
それはともかく、たとえ年間200億ドルの半分、100億ドルだとしても、政府保証債券を発行して調達するというのは相当な無理スジです。
政府そのものが発行するのではなく、SPV(特別目的会社)が発行主体になるにせよ、政府保証が入っているのですから何かあったときには政府が引き受けなければなりません。
つまり、年間100億ドルを政府保証債で調達すれば、その分政府負債が積まれるのとほぼイコールです。ということは1,000億ドルが負債にオンされるわけです。
一般に政府保証付きSPV(あるいは公的機関)債務は、保証が発動するまでは「偶発債務(contingent liability)」として扱われ、一般政府の「確定債務」には直ちに算入されません(多くの国の公会計・IMF/GFS/PSDS等の基準で同様)。
ただし、政府は保証限度の設定・開示、保証料の受け取り、財政リスクの注記が求められ、保証が履行されればその時点で政府の確定債務(または支出)に繰り入れられます。
これは非常に危ないことです。
なぜなら政府財政はすでに火の車状態であるのに、政府負債をどんどん積み上げることとイコールのことを行うわけです。
しかも今回の政府保証債は恐らく外貨建てすから(ウォン建てで発行すると対米投資のためにドルに両替しないといけなくなるので無理:それこそ外為市場に影響する)、つまり元利払いにドルがいることになります。
支払えなくなったらデフォルト(債務不履行)で、たとえ発行体が政府ではなくSPVだったとしても、政府保証があるので、韓国政府も巻き添えです。
下手すると韓国政府は大変なことになるのではないか――と考えるのは筆者だけでしょうか。
全文はソースで
(吉田ハンチング@dcp)
https://money1.jp/archives/157314







