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【日経新聞社説】日韓は首脳往来を定着させよ
今回の会談は首相が党総裁の辞任を表明した後に決まった。韓国大統領が2国間会談のためソウル以外の場所に日本の首相を招いたのは21年ぶりだ。首相へのねぎらいとともに、日本との安定的な関係を重視する李政権の熱意の表れだと受け止められる。
両首脳は、少子高齢化や首都圏への人口集中など両国が抱える共通課題の政府間協議を加速させる文書を発表した。李氏が首相と最後に会う舞台として地方都市を選んだ理由の一つでもあろう。相互利益にかなうと評価できる。
北朝鮮の金正恩総書記は「核武力による安全保障は絶対不変だ」と核兵器に執着する。トランプ米大統領が金正恩氏との年内の会談に意欲を示すなかで、日韓首脳が北朝鮮の「完全な非核化」に向けた連携を申し合わせたのは米朝双方へのメッセージになる。
中谷元防衛相が9月に日本の防衛相として10年ぶりに訪韓し、当局間の関係強化で一致したのも前進だ。李政権は特に経済協力に熱心で、日本も応じるべきだ。
中国と北朝鮮、ロシアに囲まれ、民主主義や法の支配などの普遍的な価値観を共有する日韓は連携の重要性が増している。シャトル外交を定着させ、信頼と協調を積み重ねていく努力が望ましい。
韓国側は同国への理解が深いとみなす石破首相が退くことで日韓関係が後退する事態を恐れている。後継首相と李氏には、歴史問題をはじめ両国間の懸案をいかに管理していけるかが問われる。
首相は2001年にJR新大久保駅で線路に落ちた人を救おうとして亡くなった韓国人留学生、李秀賢さんの墓を現役首相として初めて訪れ、手を合わせた。両国民の心の通い合いも大事にしたい。
日経新聞 2025年10月3日 19:00
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK032E80T01C25A0000000/