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「ホームタウン」JICAが撤回しても続く抗議…外国人は「なんか怖い」が、排外主義の成功体験になるまで……木更津に100人超が集まる
https://www.tokyo-np.co.jp/article/439239
2025年9月30日 06時00分 有料会員限定記事
国際協力機構(JICA、本部・東京都千代田区)が25日、千葉県木更津市など国内4市をアフリカ諸国の「ホームタウン」に認定する事業を撤回した。「移民促進策」という誤情報に基づく抗議が広がったためだ。だが、撤回後もなお、関係自治体で抗議デモをする人たちがいる。一体何を問題視しているのか。デモを取材し、考えた。(松島京太、中川紘希)
◆木更津市役所前で「差別が嫌なら日本から出て行け」
「移民反対」「JICA解体」。26日夕、木更津市役所前で開かれた「アフリカ移民反対デモ」に100人超が集まった。日本国旗を振り、手作りのプラカードを掲げる。そこには「財務省解体」という訴えも。女性も多く参加しているように見えた。
「差別が嫌なら日本から出て行けよ」。拡声器を持った男性からそんな主張が飛び出した。現場にはデモに異議を唱える「カウンター」の人々も現れ、騒然とした雰囲気に。仕事帰りの通行人らは、何事かと驚いた表情で見つめていた。
JICAは8月21日、横浜市で開かれたアフリカ開発会議(TICAD)に合わせ、国際交流を目的に国内4市をホームタウンに認定。木更津市はナイジェリアのホームタウンとされた。
◆根拠のないスピーチに参加者はうなずき
しかし、ナイジェリア政府が「日本政府が特別ビザを出す」と誤った発表をしたことなどを発端に、交流サイト(SNS)上で「移民によって治安が悪化する」などの声が広まった。ナイジェリア政府が同月26日に発表を取り消し、日本政府が「移民促進」の意図を否定しても批判が相次ぎ、JICAは今月25日、ホームタウン事業の撤回を表明した。
それでも、抗議の火が消えない。「木更津の人口は知らないが、ナイジェリアの人たちが万単位で入ってくる。男の子までレイプする人種と、ルールを守る日本人が共生できるわけがない」。根拠のないスピーチに対し、デモ参加者はうんうんとうなずく。
4歳の長男と2歳の長女を連れてデモに参加した東京都中央区の主婦(41)は「木更津市内に別荘があるので治安が悪くなると嫌だ。ナイジェリアはめちゃくちゃやばい国っていうのが常識。例えばデンマークの人を受け入れるなら分かるけど、犯罪率も高いし来てほしくない。どこかで逃亡して適当に繁殖しててもおかしくない」と差別的な言葉を連発した。
◆漠然とした不安が増幅して「移民反対」にまで
「移民促進」を政府が否定しているし、事業自体が撤回された今、なぜ抗議の声を上げるのか。そう問いかけると、「目先の火消しをしているだけ」「JICAが国のボーダーラインをめちゃくちゃにしてグレートリセットを図ろうとしている」と要領を得ない。4歳の長男には「悪い日本の人たちが日本の治安を悪くするために悪い政策をしている」と日々「いっぱい話をしている」という。
ただ、女性が排外主義的な考えを強く持ち始めたのは最近のようだ。「子どもの幼稚園に海外ルーツの子どもが増え、暴力をふるわれたわけじゃないけど、言葉や文化の摩擦が多くて余計な気を使う。そういうことからストレスがたまり始めたころ、参政党みたいな主張をする政党がいて『私と考えが一緒』と驚いた」
参政党が掲げる「日本人ファースト」に共感を覚えた女性。今夏の参院選で初めて選挙に行ったという。
ほかの参加者にも取材したが、口をつくのは「なんか怖い」といった言葉。外国人への漠然とした不安が増幅して「移民反対」の主張に行き着いたとする声が多く聞こえてきた。
◆事業撤回「なかなか混乱が収まらない」
「誤解を正すための措置は直ちに行ってきたつもりだ。しかしながら、なかなか混乱が収まらない」。JICAの田中明彦理事長は25日の記者会見で、事業撤回の理由を説明した。
ホームタウン構想を巡る誤解が拡散後、批判や抗議が関係4市に集中した。
木更津市には、26日までに電話とメールが約1万30..
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