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北九州市「ムスリム対応の給食を提供」誤情報で自治体に1000件超の抗議、拡散者の法的責任は? 民事上の損害賠償責任を負う可能性…
弁護士ドットコムニュース
「北九州市がムスリム対応の給食実施を決定した」といった情報がSNSで拡散され、その情報を信じた市民などから市に抗議の電話やメールが殺到しています。市は24日に記者会見を開き、ムスリムに対応した給食を決定した事実はないと否定しました。
拡散された情報は、アフガニスタン出身のムスリム女性が、豚肉などを除いた給食の提供を求める陳情を市議会に提出し、これが可決されてムスリム対応の給食が始まったという内容でした。
実際には、この陳情は2023年6月に受理されたものの継続審議となり、2025年2月の市議会改選により廃案となっていました。
一方、市は同月にアレルギー対応として28品目(豚肉含む)を除いた「にこにこ給食」を一度だけ実施しており、結果的にムスリムにも対応した給食となったことから、これが曲解されて誤情報として広まったとみられます。
投稿した人、それをリポストやいいねなどで拡散させた人、投稿を見て市に電話やメールをした人、それぞれ、投稿の内容を本当だと思い、こうした行動に出た可能性があると思われます。
市によると、抗議の電話やメールは1000件以上にのぼり通常業務にも支障をきたす事態となったとのことですが、これらの行為は法的に問題となるのでしょうか。
●投稿者・拡散者の法的責任
投稿者や拡散者が「虚偽の情報を広める」という認識がなかった場合、偽計業務妨害罪(刑法233条)の成立は難しいと考えられます。
同罪は、1)「虚偽の風説を流布」し、または2)「偽計」を用いて、人の業務を妨害した者に適用されます。
まず、1)「虚偽の風説を流布」からみると、虚偽であることを認識していることが前提となるため、真実だと思って投稿、拡散した場合には適用されません。
また、2)「偽計」についてですが、「裁判例における「偽計」概念とは、人の不知や錯誤を利用する行為のほか、非公然と業務活動を妨害する行為全般を含む概念となっているのである。換言すれば、気が付かないうちにこっそり加害することが「偽計」に当たると考えられていることになる。」(LEGAL QUEST 刑法各論〔第2版〕/2013年4月/有斐閣、p120)といった解説もあり、必ずしも虚偽の情報であることの認識までは要求されていないと考えられます。
しかし、市の活動について知り得た情報を真実だと思い、その不当性を主張するためにSNSで拡散する行為は、正当な表現活動の域を出ないものと思われます。 また、情報を拡散する際に、市の業務を阻害することの認識があるわけでもないでしょうから、通常は業務妨害の故意も認められないでしょう。
したがって、よほどの事情がない限り、偽計業務妨害罪が成立するとは考えにくいです。
しかし、民事上の損害賠償責任を負う可能性はあります。
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