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【読売新聞】 韓国TPP検討 保護主義の防波堤を強めたい
韓国政府がTPPへの加盟を検討する方針を表明した。トランプ政権の高関税政策で輸出の減少が懸念され、海外の販路を広げる必要があると判断したためだ。
日本が主導するTPPには、豪州、英国、ベトナムなど12か国が加盟している。
韓国は今後、関係者の利害調整を進めた上で申請を行い、全加盟国から承認を得られれば加入できることになる。
「米国第一主義」の下で乱発される高関税政策に対処するためには、日本や欧州など自由貿易を守る意思のある国や地域が互いの市場を開放し、貿易を活発にして成長を図ることが最善の策だ。
TPPは、世界全体の国内総生産(GDP)の約15%を占める巨大な自由貿易圏である。先進7か国(G7)に次ぐ経済規模を持つミドルパワーの韓国が加盟すれば、自由貿易体制の強化につながることが期待されよう。
TPPは関税を100%近く撤廃したほか、知的財産権の保護やデータ流通の促進なども定め、極めて高い自由化水準を実現した協定だ。欧州連合(EU)も連携を図る意向を示している。
TPP加盟国の拡大は、ルールを軽視するトランプ政権をけん制する効果も持つだろう。
韓国は文在寅政権時代の2021年にも、加盟を申請する方針を示した経緯がある。しかし農業団体などが関税撤廃に反発したほか、文政権の反日路線で日韓関係が悪化し、議論は停滞した。
その後、日韓関係は尹錫悦前政権の下で大きく改善した。李在明大統領も、未来志向の関係を築く考えを示している。
日韓関係が改善基調を続けるなら、日本も加入を後押しできるのではないか。北東アジアの安全保障環境は、かつてないほど厳しさを増している。日韓両国の経済関係の深化は、防衛協力の緊密化にもプラスになろう。
ただし、日本にとって見過ごすことができない課題がある。
韓国が、東日本大震災後の13年9月から続けている福島など8県産の水産物の輸入禁止措置だ。原発事故に伴い55か国・地域が規制を導入したが、解除が進み、今も輸入停止措置が残るのは、中国や韓国など4か国・地域のみだ。
日韓は協議を通じ、禁輸措置の撤廃にもつなげる必要がある。
2025/09/15 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20250915-OYT1T50008/