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オンラインで言い渡す「死刑」 インドネシア、コロナが変える司法
判決が言い渡される法廷に、被告の姿はなかった。インドネシア東ジャワ州の地方裁判所で2020年10月に開かれた公判。約60キロのコカインを密輸したとされる40代のマレーシア国籍の男に対する判決を裁判長が言い渡した。「被告人は、死刑」――。
途切れる音声、映像「妥協しなければ」
被告がいたのは拘置施設で、インターネットのオンライン会議システムを通じて「出廷」した。法廷に集まった裁判官、検察官、弁護人、そして通訳は、モニターを通じて被告の姿を確認した。これが、被告の弁護人を務めたグアン・ユエ弁護士(38)が語る当時の法廷の様子だ。
「すみません、判決は死刑で合っていますか?」
判決を聞き終えた被告はそう聞き返したという。ユエ弁護士は「音声が途切れ、よく聞こえなかったのでしょう。『死刑だ。でも控訴するから大丈夫』と伝え、その場を収めるしかありませんでした」と振り返る。
新型コロナウイルスの感染拡大で、世界のあらゆる分野でオンライン化が加速した。司法もその一つ。コロナ禍以前の18年ごろから民事司法手続きのオンライン化を進めていたインドネシアでは、最高裁が20年9月、刑事裁判の被告の「オンライン出廷」まで認める通達を出した。だが課題も多い。裁判所の古い機材や不安定なネット環境でのオンライン裁判は、被告を不利にするとの指摘がある。
ユエ弁護士は言う。「死刑判決が出る可能性は高かったかもしれません。しかし…
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毎日新聞 2021/12/4 17:07(最終更新 12/4 17:56) 有料記事 5064文字
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