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【東亜日報コラム】 ウクライナ戦争の北朝鮮軍捕虜、いつまで背を向けるのか
韓国政府関係者の頭の中が「金正恩(キム・ジョンウン)総書記、そして李大統領を満足させるアイテムは何か」でいっぱいの間、数万里離れた異国では、ウクライナ戦争に参戦し、ウクライナ軍の捕虜となった北朝鮮軍の若者2人が7ヵ月以上放置されている。
彼らは韓国に行きたいという意思を何度も示したが、韓国では関心を持つ人がいない。
ウクライナ事情に詳しい関係者によると「ウクライナ当局は当初(韓国への)捕虜送還の対価を考えていたが、今では対価を放棄してでも(韓国が)連れて行くと言えば送る意向がある」と述べた。
しかし韓国ではこの捕虜たちを連れて来ることができる関係省庁が、目をつけられるのを恐れて口にも出せないようだ。
実際、李氏が連れて来るよう指示すれば即座に実現することだ。韓国政府の公務員が弁護士を伴って行き、国際法に基づいて送還手続きを踏めばいくらでも連れて来ることができる。
ウクライナに派兵された北朝鮮軍は、北朝鮮の実態を生々しく示す標本だ。韓国国家情報院は、北朝鮮軍1万5千人が派兵され、戦死者約600人を含む死傷者約4700人が発生したと把握している。この死傷者の中で捕虜がたった2人しかいないというのは非常に異例だ。極端に洗脳された北朝鮮軍は捕虜になるより自爆を選ぶ。しかしそれがすべてではない。
ウクライナ軍兵士たちは「北朝鮮軍は負傷した戦友を連れて行けない場合は射殺して撤退する」と証言している。部下が捕虜になると、上官に厳格な連帯責任が問われるためだ。人類の戦争史において戦闘中に負傷した部下を殺せなかったことで指揮官を処罰する軍隊はなかった。戦闘機による自殺攻撃である「神風」で悪名高かった日本軍もこれほどではなかった。
ウクライナ軍は北朝鮮軍を捕虜にするための特殊部隊を運用したが、負傷した2人だけを生け捕りにできた。この捕虜たちは「手榴弾があれば自爆していた」と語った。昨年12月に初めて捕虜となった北朝鮮軍兵士は負傷がひどく死亡したとウクライナ軍は発表したが、実は自ら命を絶ったとされている。その後公開された別の北朝鮮軍捕虜の手が包帯でぐるぐる巻かれていたのは、負傷のためではなく、自殺を防ぐためだったという。
このような現実の中で2人が捕虜となったことも、心を変えて韓国に行きたいと言ったことも奇跡のようなことだ。我々はその奇跡に背を向けている。
北朝鮮の若者たちが10年間同じ釜の飯を食べた戦友をためらいもなく殺せる残酷な軍人になったことも、命をためらいなく放棄するよう洗脳されたことも金正恩のせいであり、我々とは関係ないことなのか。
韓国は世界の難民のための募金広告がテレビで流れる国だ。ところがわずか数十キロの北朝鮮にはいつ死ぬか分からない戦場でも、豚の脂身一切れに満足げに笑う同胞が暮らしている。ロシアに派兵されれば死ぬ時は死ぬとしても、腹いっぱい温かく暮らせると志願する若者たちがいる。
我々は北朝鮮住民をすべて救うことはできない。しかし「地獄」のような戦場で生き残った20歳、26歳の若者たちが一日も早く新しい人生を送れるよう手を差し伸べることはできる。この若者たちを無視するなら、李在明政権が主張する南北人道主義の意味は別の解釈をしなければならない。正恩氏に好印象を与えることだけが人道主義で、好印象を与えられないなら人道主義ではないということなのか。2人の若者は今日も「いつ韓国に連れて行ってくれるのか」と尋ねている。
Posted August. 12, 2025 08:44, Updated August. 12, 2025 08:44
https://www.donga.com/jp/article/all/20250812/5780578/1