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【朝鮮日報コラム】漢江の奇跡、江南の悲劇 韓国社会の現実を紹介する外国人対象のツアー
外国人にとっては見慣れぬ光景だっただろう。美容形成外科でぎっしり埋まった高層ビル、「入居するためには数百万ドル(数億円)が必要」とされる江南区狎鴎亭のみすぼらしいマンション、どこに行ってもモーテルだらけ…どれも他の国ではめったに見られない風景だろう。若者たちが就職の面接に備えて美容整形手術を受けるとか、カップルが持ち家を購入する金を用意できずモーテルを利用しているといった、歪曲(わいきょく)あるいは誇張された説明も次々に飛び出した。
この外国人ツアーに関する記事が出た後、読者の反応は二つに分かれた。「恥ずかしいけれどほとんどが現実なんだから、どうしようもない」「わざわざ国のイメージを傷つける必要があるのか」というものだ。記者は内心、後者に近い感情を抱きながら取材を始めた。また、もしかしたらでたらめな解説が飛び出すかもしれないと考え、終始ガイドの説明に耳を傾けていた。しかし、一部の細かい誤りを除いては、ツアーが見せてくれた韓国の現実を頭ごなしに否定するのは困難だった。
江南を「悲劇の現場」にした要因は、住宅価格だ。衣食住のうち住居は最も解決が難しい問題となった。天井知らずの住宅価格高騰が「N放世代(何種類ものことを諦めた世代)」を量産し、成功を目指すための終わりなき競争に若者たちを追い込んだ。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも国民の幸福指数は低く、若者の自殺率は最悪レベルだ。
ツアーが終わると、13歳の息子と参加したオーストラリア人が「韓国のリアルな裏側を見ることができた」と話した。オーストラリアの子どもたちは午後2-3時になると学校から帰宅して走り回って遊び、毎週末に旅行に行くと言った。名門大学に行くために命がけで勉強することなど、想像もできないと話した。調べてみると、オーストラリアの国民幸福指数はOECDの平均値を上回っていた。チャン・ガンミョンの小説『韓国が嫌いで』に登場する主人公が、競争主義と外見至上主義に疲れて向かった場所もオーストラリアだ。彼にとっては韓国が地獄のように見えるかもしれないと思った。
ツアーで最後に立ち寄ったのは漢江公園だった。私たちが誇る「漢江の奇跡」を紹介していたが、参加者たちは「悲劇的な(tragic)奇跡」と表現した。奇跡の裏側には、終わりなき競争の中で生きていく韓国人の不安と不幸があると感じたからだろう。そういう意味では、この観光商品は、歴史的な災害・苦難の現場を訪れる旅行「ダークツーリズム」商品だといえる。
ダークツーリズムの本来の目的は、悲劇についてあらためて考え、未来のための教訓を得ることだ。我々は世界が注目するような繁栄を成し遂げた。しかし、それと同時に外国人たちが驚がくするような暗い影も生み出した。もっと生きやすい大韓民国のために、我々は自分たち自身を振り返るべき時期に来ている。
キム・ドギュン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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