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最悪は避けられたが日本・EUと本当に同水準なのか 関税15%でも韓国経済は耐えられない可能性
相互関税25%の発動を翌日に控え、15%へと引き下げることで合意したかたちだ。
財界では、韓国が日本や欧州連合(EU)と同水準の関税合意を導き出し、アメリカ市場で対等な条件下で競争できる最低限の土台を確保したとの評価が出ている。
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しかし、手放しで喜べる状況ではない。「15%」という結果も、韓国経済に与える影響は少なくない。
韓国産業研究院が今年4月に発表した「トランプ新政権の関税政策の影響と示唆」という報告書によれば、基本関税(10%)が適用された場合でも、韓国の対米輸出額は年間で9.3%(15兆8000億ウォン=約1兆7000億円)減少すると推定された。実質GDPは0.34%(2024年基準で7兆8000億ウォン=約8400億円)減少すると見込まれていた。
したがって、15%の関税がもたらす打撃はそれ以上になるとの分析だ。
今回の合意により、米韓FTAは事実上、無力化されたとの評価も出ている。無関税の恩恵を受けていた韓国製品の価格競争力を、今後維持できなくなったという意味だ。
特に自動車については、表面上は日本やEUと同じ15%の関税を課されたが、実質的な増税幅は韓国が最も大きい。日本はもともと2.5%、EUは10%の関税を負担していたことを考えると、韓国車が今後価格面で不利な立場に置かれるとの見方が強い。
韓国政府も自動車関税が15%に決まった点について「残念な部分だ」と評価した。キム・ヨンボム大統領室政策室長は「FTAが大きく揺らいでいる」とし、「最近の各国の交渉を見ても、WTOやFTAとはまったく異なる方式で進行しており、制度そのものが大きく変化していると理解している」と述べた。
韓国商工会議所、全国経済人連合会、韓国経営者総協会、韓国貿易協会、中小企業中央会、韓国中堅企業連合会など経済6団体は論評を通じて、「今回の合意は輸出環境における不確実性を解消しただけでなく、韓国企業が世界最大市場であるアメリカで、他の主要国と同等かそれ以上の条件で競争できる環境を整えたという点で大きな意義がある」と評価した。
サムスン電子は7月31日の第2四半期決算発表カンファレンスコールで、「韓米両国の協議妥結によって不確実性が軽減されたと考えている」と述べた。そのうえで「合意内容の詳細について両国間で追加の協議が行われることを注視し、それに応じた対応策を用意する予定だ」と付け加えた。
黄色い封筒法・商法改正、グローバル競争力の低下
現代自動車グループは、原則的な立場を表明した。声明を通じて「15%という関税が適用されることにより、韓国車の競争力を強化することが重要な課題となっている」とし、「現代車・起亜は関税の影響を最小化するため多角的な対策を講じるとともに、品質・ブランド競争力の強化と技術革新を通じて、より強固な基盤を築いていく計画だ」と明らかにした。
対米投資という形で組成される予定の3500億ドル規模のファンドも、企業側にとっては大きな負担となる見通しだ。
大統領室は、そのうち造船分野の1500億ドルを除けば、実質的には2000億ドル規模であり、日本の投資額の36%程度にすぎないと強調した。しかし企業側はすでにかなりの現地投資を行っており、今後の投資原資の確保に頭を悩ませることになりそうだ。
2016年のトランプ大統領1期目以降、サムスン、LG、SK、現代自動車などの主要韓国企業がアメリカに行った投資額は1600億ドル(約24兆円)を超える。10年間かけて投じた金額の2倍以上を再び投資しなければならない状況にある。
財界は、交渉終盤にイ・ジェヨン、チョン・ウィソン、キム・ドングァンら企業トップが支援に乗り出した点を踏まえ、「黄色い封筒法(労組法2・3条改正案)」や商法改正案など、国会での立法作業を中断してほしいと訴えている。
経済6団体は「企業を取り巻く対外的不確実性が解消された今、国内投資と雇用創出により一層尽力する」とし、「そのためにも、現在国会で審議中の企業関連法案が、韓国企業のグローバル競争力向上につながるよう慎重に審議されることを望む」と述べた。
ある財界関係者は、「関税交渉こそ妥結したが、アメリカ市場での企業活動はより厳しくなった」とし、「表では企業に協力を求めながら、裏では規制立法で企業を締めつけるようなことは矛盾している」と批判。「交渉妥結に財界が一役買った以上、大統領室が調整役を果たすべきだ」と述べた。
(記事提供=時事ジャーナル)
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