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【朝日新聞】過去と違う外国人への批判 在日コリアンが抱く危機感と理由の分析
――「外国人が優遇されている」という主張が広がっています。
国政選挙で外国人への憎悪をあおるような言動が、堂々となされるようになったことに驚いています。かつては、例えば、在日コリアンに対する偏見や差別意識を持っている人でも、大勢の人の前でそれを語ることは一定程度、はばかられてきました。
――在日コリアンらを対象に、民間団体が過去に行っていたヘイトスピーチなどとは違いますか。
違いますね。政治家が堂々と、実態のない外国人への「優遇」や「特権」をあげて、排他的な発言を繰り返しているのです。ましてや、選挙活動の場で、国会に議席を持つ政党の候補者たちが外国人排斥を語り、他の政党も追従しています。これまでの民間団体などによるヘイトスピーチとは質的に異なります。
影響力のある政治家が公然と差別的な内容を語ることによって、人々に差別や偏見が急速に浸透してしまうことを懸念しています。また、そうした発言をしてもよいのだという誤解が生まれ、差別意識が助長されないか、日本社会のたがが外れてしまわないかを、危惧しています。
(略)
――在日コリアン3世として感じる社会の空気の変化はありますか。
私は小中高と大阪の公立学校に通いました。最近、当時の同級生との会食や地域の会合で、コンビニなどで働く外国人従業員が増えたことを踏まえ、「言葉が通じなくて面倒だ」といった話を聞くことがありました。
また、繁華街の中小規模のビルを中国人が買ったという話が、否定的な意味で語られるのも耳にします。外国人が経済的な影響力を持つことを、心配する人の心理が理解できないわけではありません。国籍に関係なく、違法行為は当然、取り締まられるべきです。しかし、日本に合法的に滞在し、経済活動に取り組んだり、資産を形成したりするのを否定的に見るのは、おかしいと思います。
――変化はなぜ起きたと思いますか。
外国人に対する攻撃は、多くの先進国に共通して見られます。
日本では、バブル崩壊後に労働法制の規制緩和が進み、非正規で働く人が急増しました。低賃金で働く人が生み出される構造で経済的な格差が広がった結果、社会全体に経済面の不安がはびこってしまっていると思います。そうした不安の矛先がなぜか外国人に向けられていますが、責められるべきは、規制緩和によって労働者が安く使われる社会をつくった政治です。
日本ではまた、長期の経済低迷や格差の拡大、社会の停滞などにより、多くの人が自尊感情を持てないでいます。社会保障制度の縮小が叫ばれる一方で、自助や共助が強調されます。たとえつまずいても国に救ってもらえないという切迫感や、自分が取り残されるのではないかという緊張感が、人々に生じているのだと思います。そうした中で、「外国人が悪い」という扇動的な主張が強まり、それを信じてしまう人が増えているのではないでしょうか。
――日本の人々に伝えたいことはありますか。
若い在日コリアンたちにとっては、日本人との結婚が主流です。日本国籍を取る人も年間数千人単位でいます。他の国をルーツとする在日外国人の状況も似ていると思います。もはや国籍によって人々を分ける意味は薄れています。「日本人」という存在自体が多様化しているのです。
また、日本社会は急速に少子高齢化が進んでおり、留学生を含めた在日外国人の存在なくして、国内産業はどの程度、成り立つでしょうか。外国人の排斥を唱える前に、改めてこうした現実を見つめ直してほしいです。
全文はソースで
https://www.asahi.com/articles/AST7K2FK7T7KPTIL00LM.html