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【英空母/クイーン・エリザベス】日本初来航の歴史的意味 英国にとって「太平洋の最良のパートナー」安倍政権以降に急速に深化
「日英同盟」復活の動きが見えてきた。中国共産党政権が軍事的覇権拡大を進めるなど、わが国と世界が直面する「新しい時代の脅威」に対峙(たいじ)するために、日米同盟を補強・発展する必要があるのだ。英海軍最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が今年、日本に来航した歴史的意味とは。岸田文雄政権は「自由・民主」「人権」「法の支配」といった共通の価値観を守り切る覚悟を示せるのか。著書『日本が感謝された日英同盟』(産経新聞出版)が注目されるジャーナリストの井上和彦氏が、かつての日英同盟を振り返り、日本の進むべき道を考察する。
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2021年9月、英海軍最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が日本に初めて寄港し、周辺海域で海上自衛隊などと数次にわたって共同訓練を実施した。香港の旧宗主国として、中国の世界的脅威に目覚めた、英国の「太平洋シフト」を象徴するかのような空母打撃群の派遣といえる。
英国は同月、これに合わせるかのように、米国とオーストラリアとの新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」創設を発表した。英国は、日本と米国、オーストラリア、インドによる戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」にも参加する意向を示している。
そんな英国にとって「太平洋の最良のパートナー」は、かつての同盟国・日本なのだろう。
英国の日本へのラブコールは、2020年秋ごろから加速した。中でも注目すべきは、英国と米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの5カ国で構成された「ファイブ・アイズ」への日本の加盟提案だろう。
ファイブ・アイズは、英連邦のアングロサクソン諸国と米国の5カ国が、安全保障上の高度な機密情報を共有する枠組みである。
ところが、ボリス・ジョンソン英首相は20年9月16日、議会で日本参加の意向を表明したのだ。本来ならば、こうしたことは日本の同盟国・米国からの呼びかけが筋だろうが、驚くべきことに英国からの打診だった。さらに、今年10月には、英軍制服組トップのニック・カーター国防参謀長が、AUKUSへの日本参加の可能性に言及している。
日英関係は、12年の安倍晋三政権誕生以降に急速に深化した。
15年には日英外務・防衛閣僚会合(2プラス2)が始まり、17年には日英ACSA(物品役務相互提供協定)が結ばれた。16年には、英空軍の戦闘機が来日して日英共同訓練が実施されている。航空自衛隊の次期戦闘機のエンジンや、空対空ミサイルの共同開発にまで発展した日英軍事交流は、もはや「同盟関係に等しい」といっても過言ではなかろう。
海上自衛隊は、英海軍と情報交換や部隊間協力などに関する連絡調整を行う連絡官を英海軍から迎えている。
最初の英海軍連絡官の任命式は15年、神奈川県横須賀市に記念艦として保存されている戦艦「三笠」の東郷平八郎提督が使った司令長官室で行われた。同艦は英国製で、日本海海戦を勝利に導いた。このことからも、日英両国がかつての日英同盟を頼りに関係を再構築しようとしていることが伝わってくる。
■護衛艦「いずも」が名前を継承「出雲」は日英同盟の象徴
17年8月31日、当時のテリーザ・メイ首相が来日した際、小野寺五典防衛相は、護衛艦「いずも」に案内して栄誉礼で迎えた。
同艦の艦名は、第一次世界大戦で、第二特務艦隊の旗艦を務めた英国製の装甲巡洋艦「出雲」を受け継いでいる。まさに「出雲」は、先の戦艦「三笠」と並ぶ「日英同盟の象徴艦」なのである。
小野寺氏は「いずも」艦上で、「日露戦争はその(=日英同盟)おかげで勝つことができた。第一次世界大戦では(地中海に装甲巡洋艦『出雲』らが派遣され)英国を助け、さまざまな船をエスコートした。ちょうど100年前だ」と語りかけた。
メイ氏は「両国は長きにわたり協力してきた。私たちが防衛分野のパートナーシップを強めていることは、この訪問で示されている」と語っている。(『産経ニュース』17年8月31日)
日英両国は、かつての「日英同盟」と「日露戦争」、そして「第一次世界大戦」の連携と協力の記憶を頼りに再び関係を強化しようとしている。
今後ますます厳しさを増す、わが国の安全保障環境を考えるとき、いまこそかつての日英同盟を再検証し、これからの国際協調と同盟のあり方を模索すべきであろう。
■井上和彦(いのうえ・かずひこ )ジャーナリスト。
夕刊フジ
https://www.zakzak.co.jp/article/20211130-NRSU2B4PNFOCLFBMYL65GBHJ2A/