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京都のゲストハウス、イスラエル人に「戦争犯罪に関与ない」誓約を求め物議…「韓国人・中国人お断り」との違いは?
【X】実際の誓約書の文面
https://twitter.com/WindVilla/status/1936860952592523639
京都市は調査を行い、「差別的行為と受け止められかねない」とゲストハウスに注意したが、行政処分などは下されなかった。
ゲストハウスの行為は本当に「差別」にあたるのだろうか。また、違法性はないのか。弁護士に聞いた。
■旅館業法は宿泊拒否に「正当な理由」を求めるが…
そもそも旅館業法では、正当な理由がない限り、客の宿泊を拒否することができないと定められている(5条)。
また報道によると、京都市は、客が「他国の紛争において戦争犯罪に関与している可能性がある軍関係者であること」は宿泊を拒否できる「正当な理由」にあたらない、と回答している。
ゲストハウスも宿泊拒否ができないことを認識しており、署名は他の客やスタッフの心理的な不安を軽減することを目的にした、あくまで形式的なものであるという。
当初、署名は任意であることが明示されていなかった。京都市から照会を受けた厚労省は「あたかも署名がなければ宿泊を拒否されると誤認される形で誓約を求める行為は不当な対応」と回答していた。
しかし、現在は、ゲストハウス側の判断により「拒否しても宿泊は可能」という旨の注釈が誓約書内に記されている。
海外の事情や差別問題に詳しい杉山大介弁護士も「署名が任意であるなら『拒否』にはあたらず、旅館業法には抵触しない」と答える。
「また、差別的な取り扱いとして違法ではないかという点についても、実際に戦争犯罪に関与している客や不関与を誓約することができない客を宿泊させることには、下記のようにゲストハウス特有の事情からすると、相応の配慮を宿泊施設提供側が考慮しなければならなくなるのは確かです。
ゲストハウスは就寝するところを含めて共用スペースが多く、たとえば戦争犯罪に関与すると評価できるレベルで戦争に関わっているイスラエル人の客とイスラム諸国の客を同時に宿泊させてしまうと、実際にトラブルが起こる可能性があるのは否めません。
そういったリスクを考慮すれば、私は仮に誓約書への署名を必須としたとしても、署名すればイスラエル人でも宿泊できるのであれば、旅館業法に違反しておらず、また差別的な取り扱いとして違法にもならないと考えます」(杉山弁護士)
■「韓国人・中国人お断り」との違いは?
昨年7月には、大久保(東京都・新宿区)のイタリアンバル店が入り口に「韓国人・中国人お断り」などと掲示し、その写真をSNS上に投稿した行為が物議をかもした。
憲法14条からは「人種に基づく差別の禁止」が導かれるため、国籍や人種を理由とした入店拒否は違法だ。これまでにも、入店を拒否した宝石店や公衆浴場、またゴルフクラブの入会や賃貸借(物件)の入居を拒否した企業等に対して、不法行為に基づく損害賠償(民法709条)が認められている。
さらに、イタリアンバル店の掲示は、日本が批准している人種差別撤廃条約(「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」)にも抵触している。
表面上、今回のゲストハウスの行為にも、イタリアンバル店と同様の問題があるように見受けられるかもしれない。
しかし、杉山弁護士は「上記に解説した通り、そもそも国籍や人種を理由とした拒否になってないと私は評価しているので、違法な差別になる問題ではないと考えます」と答える。
イタリアンバル店の場合、「中国」「韓国」という国籍が、入店を断る理由と明示されている。一方で、ゲストハウスが求めているのは「戦争犯罪に関与していないこと」であり、その条件をクリアすれば、イスラエル人やロシア人なども許容される。
さらに、イスラエルやロシアについては、実際に国際機関などにおいて戦争犯罪などの問題が指摘された国であるという客観的な理由がある。そして先述したようにゲストハウスという施設としての特性上、トラブルが起こるリスクもある。
上記を考慮すると、国籍がイスラエルやロシアなどである客に宣誓書への署名を求める行為は合理的に説明することが可能であり、理不尽な差別と認定でき得るイタリアンバル店の行為とは全く別物であるといえる。
以下全文はソース先で
弁護士JP編集部 2025年07月15日 10:38
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