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ローソンの生鮮・格安コンビニ「ローソンストア100」のおかずが一つだけの弁当が好調だ。6月発売の第1弾「ウインナー弁当」(税抜き200円)は、同社の弁当の販売記録を大幅に更新する50万食(10月末現在)の大ヒットとなり、11月10日から販売されている「ミートボール弁当」(税抜き200円)は、そのウインナー弁当の発売直後を超す勢いだ。白いご飯に、おかずはそれぞれウインナー5本とミートボール6個だけという、見るからにシンプルな弁当だが、その実現には、10年間あきらめなかった発案者の存在があった。【増田博樹/デジタル報道センター】
「必ず売れる」信じたが
「ウインナーが嫌いな人はいないのに、なぜないのだろう」。大ヒットになったウインナー弁当を世に出すきっかけになったのは、同社の林弘昭さん(43)=現運営本部統括部長=が感じた素朴な疑問だった。林さんは、売り上げ増を目指して店を指導する運営畑一筋で歩んできた。店舗でオーナーや店長らと日々語り合いながら、何か際立ったもの、独自性のあるもの、そしてローソンストア100の客層にあうものはないか――と考えた。それが白いご飯とウインナーだけの弁当だったという。約10年前のことだ。
球児だった高校時代、ウインナーは林さんの弁当の定番だった。弁当に欠かせないウインナーにもかかわらず、なぜ主役になれないのかと矛盾を感じた。好きなウインナーを好きなだけ食べられる弁当。競合のコンビニにそんな商品はなく独自性が発揮できる。さらに価格。ローソンストア100では弁当と一緒にカップ麺やサラダなどを買う利用者が多い。買い合わせをしても500円に収まるよう値段は200円と腹の中で決めていた。コンビニ弁当は300~500円が主流。ここでも差別化ができる。「必ず売れる」と林さんは信じたという。
林さんは開発部門である商品部の米飯担当に相談。しかし、社内の反応はよくない。「弁当には『顔』が必要だ。ウインナーでは顔にならない」「見た目のバランスが悪い」「彩りがない」「おかずの数が……」と散々だった。「全員が『売れるの?』『うーん』という感じでした」(林さん)。それでも商品部の担当者に会うたびに、ウインナー弁当のアイデアを「数知れないほど」(同)繰り返し訴えた。
開発担当者を通じて何度も試作品を作ってもらった。だが、ウインナーが2本だけのもの、価格が500円ぐらいになりそうな長いウインナーがドンと1本乗ったもの、刻んだウインナーをご飯にかけたもの……。林さんのイメージとは違った。5年ほど前に弁当工場を訪ねた時には、本来は社内研修の一環で弁当開発の場ではないにもかかわらず、スタッフに試作を頼みこんだ。林さんはいつしか「ウインナーの人」などと呼ばれるようになっていた。
理想のウインナーを求めて
2016年、あきらめなかった林さんに会社もようやく動く。近畿エリア限定でウインナー弁当の販売が決まったのだ。林さんは当時、近畿エリアで店の売り上げを伸ばす業務の責任者。「発案者=売る責任者」だからきっと懸命になって売るだろう、との判断だった。現在の形に近い商品も完成し、約5年間の思いがようやく日の目を見ようとしていた。しかし、オーナーや店長らと、さあやるぞ、となった矢先、…(以下有料版で,残り1710文字)
毎日新聞 2021/11/23 12:00(最終更新 11/23 14:13)
https://mainichi.jp/articles/20211122/k00/00m/020/288000c