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【韓国】 「考えない教育」が若者を過激思想へ…教育学者が語る危機の本質

14日、ソウル市麻浦区でインタビューに応じるソウル教育大学のクォン・ジョンミン教授(c)news1
【04月17日 KOREA WAVE】「これは一生に一度の教育のチャンスです。民主主義の価値を“頭”で覚えるだけでなく“意味”と“価値”を伝えるべきです」
20~30代の一部が法廷を占拠するなどした「ソウル西部地裁騒乱」事件の余波が冷めやらぬ中、ソウル教育大学のクォン・ジョンミン教授(幼児・特別教育)は、極右や過激主義に傾倒する若者たちの背景に「考えることを放棄させる教育」があると指摘した。
クォン・ジョンミン教授はソウル教育大学の教育学者。SNSでは「修行中の母」としても知られ、息子を“極右YouTuber”から引き戻した経験を記した投稿が話題になった。現在はYouTubeで「過激思想に染まらない子どもの育て方」シリーズを配信し、保護者との教育対話を続けている。
news1はクォン教授とともに、極端な思考に陥りやすい教育の構造を分析し、どうすれば対話を通じて彼らと向き合えるかを探った。
◇「考えない人間」を育てる詰め込み教育
クォン教授は、韓国の詰め込み式教育が大学教育にまで引き継がれている現状に警鐘を鳴らす。「教授自身が他の教育方法を知らない」
として、リモートで一方向的に講義する形式をその例として挙げた。
一方、国際バカロレア(IB)制度のように、科学の授業で学生が自らフィールドに出てデータを集めるような教育こそが「生きた学び」
だと評価する。
「韓国では“頭で覚えるだけ”。それが何に使えるか、どう役立つかを考える機会がない。“考える人間”と“考えない人間”の
分岐点が、今の教育制度にある」
こう断じた。
◇民主主義教育も“詰め込み式”では意味がない
「民主主義は知識ではなく、生き方そのもの。教育方法の中で身につけていく“ライフスタイル”だ」
クォン教授はこう指摘する。だが、現状では「批判的思考が大事」と言いながら、その教育方法自体が批判的思考を殺していると批判した。
過激主義が複雑な社会現象を単純化する――クォン教授は、この点に注目する。例えば「戒厳令はロマンだ」という主張は、権力を振るう側の視点に留まり、その影響が国民生活にどう及ぶかを想像しない、極めて限定的な認識にすぎないと警告する。
これはまさに、ナチスの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスが唱えた「プロパガンダは単純で繰り返しが肝心」という論理と通じている。
極端な主張は理解しやすく、気持ちがよくなる。だからこそ「他のメッセージを遮断してしまう」。クォン教授の説明だ。
◇過激主義の根底には“簡単な権力獲得”への誘惑
「本来、権力を得るには努力と時間が必要だが、暴力は短期間で権力を得る“簡単な方法”だ。これこそがファシズムの本質」
民主主義が“心地よく便利”なために、その価値を忘れがちだ。クォン教授は「守る努力をしなければ、独占的権力が入り込む隙を与える」と警告した。
思春期から青年期にかけての若者には、過激な思考から抜け出せる余地がある――脳の柔軟性が残っており、新しい意見を受け入れる力があるからだ。
一部の若者が極端な言動を模倣するのは、「仲間外れになりたくない」という“社会性”が動機になる。
だからこそ、別の視点に自分をさらす経験が重要だが、それを支える教育制度が今は乏しい。
クォン教授は「大学教育が最後の矯正機会だ。討論・作文・地域プロジェクトなどで“考える訓練”を与えるべきだ」と提言する。
極端な思想に染まった人と対話する際には、絶対にケンカをしてはいけない。教える者と学ぶ者の関係が良好であってこそ、人は最も多くを学ぶ。だからこそ、日常で使う“社会的スキル”を最大限に活用すべきだ――。
「民主主義とは、自分にとって少し損でも、みんなで合意した価値に参加すること。自分の幸せだけでなく、他人の幸せが自分の幸せを増やすと気づくことが大切だ」
クォン教授はこう締めくくった。
2025年4月17日 11:00
https://www.afpbb.com/articles/-/3573472