あわせて読みたい
接種率75%超の日本、ワクチン忌避から一転して成功に -BBC
五輪開幕が目前に迫る中、日本政府がワクチン接種の展開でこれほど失敗したことは驚くべきことのように思えた。
それから半年たち、状況は一変した。
日本は初期の混乱を乗り越えただけでなく、地球上のほとんどの国より高い接種率を達成した。現在は日本人の約76%が接種を完了している。
そのカギとなったのが五輪だった。
7月に五輪中止を訴える大規模な街頭デモがあったことを覚えているだろうか。その頃は、五輪が感染を拡大させるスーパースプレッダー・イベントになってしまうのではないかといった怒りや不安があった。
自分たちの国で開かれるビッグイベントが台無しになるかもしれないと恐れた政治家たちは、ついに行動に出た。
ワクチン接種に自衛隊が投入され、7月初旬には1日あたり100万回分の接種が行われた。
しかし驚きだったのは、物流の改善だけではなく、日本人がどれほど進んで接種を受けているのかということだ。80歳以上の接種率は95%と、ワクチンへの忌避はみられない。
ただ、こうなるとは予測されていなかった。
恐怖とためらい
日本では歴史的に、ワクチン忌避の傾向が長らく続いてきた。1月にはある調査で、大多数の人が新たに開発された新型ウイルス感染症COVID-19ワクチンに懐疑的であることが示された。
では一体何が起こったのだろうか。
専門家の中には、初期の混乱が実際には役に立ったと考える人もいる。
東京財団政策研究所の研究主幹、渋谷健司氏は、初期段階では本当にワクチンが不足していたため、特に高齢者の間でワクチンが足りないことへの不安感が広がっていたと指摘する。
渋谷氏は、こうした恐怖心が、高齢者を中心とした非常に高い接種率につながったと考えている。ほかの国で高齢者が亡くなっているのを目の当たりにし、供給が足りなくなる前にわれ先にワクチンを接種しようとしたのだという。
また、初期のワクチン展開に時間がかかったことで、より若い世代の人々は自分の番を待つ間に、ほかの国で何億人もの人々がワクチンを接種し、劇的な副作用が起きていないと知ることができた。それが、ワクチンは安全だという安心感につながった。
アメリカや欧州とのもう1つの大きな違いは、ワクチンが政治問題化していないことだ。
渋谷氏によると、日本ではワクチンを政治問題にする動きはなく、自由や個人の権利といったレンズを通してワクチンを見ることもない。陰謀論を信じ込むようなことも、一般にはみられないという。
接種率の上昇に伴い、日本の感染者と死者は劇的に減っている。
日本では8月20日、パンデミック開始以来で最多となる約2万6000人の新規感染者が確認された。
そして先週までに、その数は1日あたり150人程度にまで減少した。死者数も同様に減っており、先週には死者が報告されなかった日が数日あった。
ワクチンは非常に重要な役割を果たしてきたが、感染者などが減少に転じた要因はそれだけではない。ワクチンが人々に届く前から、日本の死亡率はアメリカや欧州よりもはるかに低かった。
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、アメリカの死亡率は10万人あたり233.8人。日本はわずか14.52人となっている。
-中略-
渋谷氏は、日本で人々はマスクをしたり社会的距離を確保したりして非常にうまく行動していたが、今ではそうした振る舞いがなくなってしまったと指摘する。
ワクチン接種の展開が成功し、緊急事態が解除されたことで、人々は職場に戻り、パブやレストランへ出かけるようになった。
1年半もの間、人と人を遠ざけていた恐怖感は薄れつつある。
渋谷氏は、現在の非常に低い感染率は長くは続かないとみている。日本の状況は欧州に比べて1~2カ月遅れているため、間もなく感染の新たな波がやってくるだろうとしている。
BBC
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-59363743