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【朝日新聞】ソウルにあった取り残された「島」 スラム住民が感じる「イライラ」「ここはイカゲームよりリアルだ」
スラム街はソウルの永登浦(ヨンドゥンポ)駅の近くにあります。古くからの交通の要所で、朝鮮戦争が1953年に休戦した後、多くの売春宿ができました。建物が老朽化して売春宿が近くの地区に移ると、貧困層が移り住んだのです。2001年に支援団体が現地に設立され、その翌年に金さんは所長となりました。
「ここはイカゲームよりリアルだ」
「ここはイカゲームの縮小版。いや、現実はドラマよりもリアルだ」。スラムの現状について、金さんは韓国で制作されたネットフリックスのドラマ「イカゲーム」を引き合いに出して表現しました。一緒に歩いたのは10月末。狭い路地を入ると、平屋や2階建ての古いモルタルの住宅が密集しています。屋根が崩れ、灰色のシートで覆った家も。韓国語で「チョクパン」と呼ばれる地区です。辞書には「間数を多くとった狭苦しい小部屋」とありました。
――住宅の内部はどういう構造なのでしょうか?
みんな私の顔見知りですから、入ってみましょう。見ての通り、廊下は1人が通れるほどの狭さです。両側に小さな部屋がウナギの寝床のように並んでいます。平均で1・5坪(約5平方メートル)、狭いもので0・5坪(約1・6平方メートル)ぐらいです。
携帯ガスコンロ、炊飯器、テレビが「3点セット」です。衣服の置き場が加われば、1人がようやく寝られるほどのスペースしかありません。住宅内にトイレがあればいい方で、なければ公衆トイレを使う。共用部分で使えるお湯がシャワー代わりです。
――たばことアルコールの臭い、すえた臭いも。焼酎が箱ごといくつも廊下に積み上げてありますね。
たばこやアルコールへの依存度は高いです。競馬などギャンブルも。生活保護でギャンブルをしても、団体の支援で食いつなげると思っている人も多い。そこが私たちの悩みです。すえた臭いの原因は、部屋で洗濯物を干しているから。外に干すとホームレスに盗まれることもあり、イスに座って見張るか、家の中に干すかです。
テレビはありますが、ネットフリックスなど有料サービスを見る余裕は住民にはありません。
イカゲームでは、失業して借金に苦しむ人、外国人労働者、脱北者ら社会生活から脱落した456人がゲームを行い、負ければ死ぬ。参加者が1人脱落するたびに賞金1億ウォン(約950万円)が加わり、最後の1人が456億ウォンを手に入れる。そんな筋書きだ。金さんによると、この地区の住人の数は偶然にも456人という。
奇しくもイカゲームと同じ人数が住むスラム街。記者はこの後、外界とスラム街の驚くほど深い溝を目にします。
以下有料記事
朝日新聞 2021/11/20 7:00
https://www.asahi.com/sp/articles/ASPCH55PZPC9UHBI02D.html?iref=sp_new_news_list_n