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【在日コリアン2世】「週刊金曜日」新編集長 「日韓、理解する人が減って遠ざかっている」
「私もマイノリティです。どんな気持ちなのか、誰よりもよくわかります。言いたいことがあっても言えない人々の声を伝えたいです」
2日、日本の進歩派雑誌「週刊金曜日」は、興味深いあいさつを発表した。「朝鮮新報」の記者出身で「北朝鮮経済」博士でもある文聖姫(ムン・ソンヒ)さん(59)を編集長に任命するという話だった。28年続く同誌で在日コリアンが編集長になったのは今回が初めて。任期は3年、中間評価もある。
15日、東京の古本屋街のある東京・神保町の「週刊金曜日」の事務所で文編集長にインタビューした。
「在日コリアンであることもそうですが、今回初めて編集長を選挙で選んだんです。最終候補は一人でしたが、メンバーの信任で80%の賛成を得ました。肩の荷が重いです」
元朝日新聞記者で「週刊金曜日」の社長兼発行人である植村隆氏が、韓国で主なマスコミの編集局長を記者や構成員の選挙で選ぶ事例を知り、民主的な制度だとして導入したという。
東京で生まれ育った在日2世の文さんは、在日本朝鮮人総聯合会(総聯)で活動した父親の影響で、高校まで朝鮮学校に通った。ジャーナリストを夢見て1986年に総聯の機関紙「朝鮮新報」に入社。20年間勤め、平壌特派員を二度も担当した。
文さんは記憶に残る記事の一つとして、1996年に書いた北朝鮮の水害被害報道を挙げた。「かなり揉めました。何人死んだなど、北朝鮮に否定的な記事にならざるを得ず、最初は(北朝鮮で)協力を得るのが難しかった。でも、状況をちゃんと知らせなければならないと説得しました」。水害現場を足で歩き回って書いた生々しい記事は、読者の心を動かし、国連や日本のNGO、在日同胞の支援が続いた。その時「記事のおかげ」だと北朝鮮で称えられたと満足げに語った。
文さんは2002年9月の日朝首脳会談で思いがけない人生の転換点を迎えた。金正日(キム・ジョンイル)国防委員長が会談で、予想を裏切り日本人拉致問題を正式に認めたため、「朝鮮新報」を辞めなければならないと考えたのだ。「中学生だった横田めぐみさんまで拉致したという事実は衝撃的でした。これまで北朝鮮の言葉を信じて、拉致はなかったという記事を書いてきたんです。私にジャーナリストとしての資格があるのかと、あまりにも恥ずかしかった。ずっと誤報を書いていたのですから」。ただ、諸事情によって退職は2006年になった。
しかし、文さんが選んだ新しい人生の道においても、北朝鮮から離れることは難しかった。文さんは東京大学大学院に入り、北朝鮮経済を研究し博士論文を書いた。難しい理論よりも、北朝鮮の日常を通じて経済を見つめた。「2500万人の北朝鮮の人々が朝鮮労働党ばかり考えているのではなく、恋愛もし、貧富の格差もあるという平凡な日常を見せたかったんです」。日本では『麦酒とテポドン:経済から読み解く北朝鮮』(2019年韓国語版発刊)という題で本も出版した。
文さんはより自由に各国を訪問するために、2018年に韓国国籍を取得し、「週刊金曜日」で勤務も始めた。同年2月の平昌(ピョンチャン)五輪から2019年2月のハノイ朝米首脳会談まで行われた「朝鮮半島平和プロセス」をめぐる激変の時間を、どう評価するかを尋ねた。「ずっと繰り返している、と感じます。これまで北朝鮮核問題を解決する機会は少なくとも3回ありました」。文さんが挙げた3回とは、朝米枠組み合意(1994年)、6カ国協議による9・19合意(2005年)、2007~2008年に北朝鮮が核開発を凍結し米国との関係改善を進めた時だ。
「北朝鮮と米国が考える非核化は異なり、米中両国の利害関係が複雑に作用するため、解決は難しいと思います。悲劇です」。最近論議されている終戦宣言に対しても「北朝鮮は反対はしないが、考える内容が異なるため、容易ではなさそうだ」と語った。
日本社会から見た韓日関係についても尋ねた。文さんは「韓日いずれもお互いを深く理解しよくわかっている人が減っているようだ」と言い、「冷戦時代には韓日協力が絶対的に必要だった。今はなぜ重要な関係なのか、互いに理解が浅くなっている」と述べた。
「週刊金曜日」最新号は「野党共闘の展望」という記事を載せた。先月31日の衆議院選挙で、5野党が候補一本化に乗り出したが、議席数がかえって減るなど惨敗した。「個人の意見であることが前提ですが、野党の共闘が失敗したとは思いません。共闘の問題というより、野党がどんな政策を作るのか、政権を握れば有権者の生活がどのように良くなるのかという希望を与えなければならなかったのに、それが足りなかったと思います」。文さんは来年7月の参院選でも野党共闘が続けられるべきだと主張した。
ハンギョレ新聞/2021-11-19 09:59
http://japan.hani.co.kr/arti/international/41752.html