「小島よしおさんを解放せよ！」読売を装う偽サイトも　IT企業が詐欺広告対策の実証試験

　SNSなどで著名人になりすました詐欺広告が横行していることについて、IT企業のデータサイン（東京都新宿区）は、本人確認をした利用者が真偽を投稿できるウェブサービス「Boolcheck（ブールチェック）」の実証試験を開始した。総務省のインターネット上の偽・誤情報対策技術の開発・実証事業の一環で、利用者はサイトのURLを登録し、本物か偽物かを投稿する。14日に運用を始め、登録された偽サイトには読売新聞の電子版を装ったものもあった。URLは同新聞に無関係のもので、タレントの小島よしおさんが政府に監禁されているという意味不明な内容だった。データサインは著名人やジャーナリストなどに証明書を発行し、詐欺広告の判別に協力を呼びかけている。

　ブールチェックは、専用のウェブサイトやスマートフォンのアプリで、真偽を知りたいサイトのURLを添付すると、登録済みの場合は真偽の情報やコメントが表示される。利用者が新しいサイトを登録したり、既存のサイトの情報を追加したりすることで、真偽の情報が増えていく。

　匿名の投稿でも、メールアドレスなどの個人情報を管理するアプリを通じて行われるため、情報の信頼性が確保される仕組み。さらに身分証明書などで本人確認をした利用者は実名での投稿もできるようになる。

著名人やジャーナリストに証明書
　同社はブールチェックのプログラムを無料で公開する。さまざまなSNSと連携し、真偽の情報を共有する構想だ。

　読売新聞電子版の偽サイトの記事中にあったリンク先は、暗号資産（仮想通貨）の購入を誘う詐欺とみられるサイトにつながった。読売新聞グループ本社広報部は「指摘されたサイトは把握していなかった」としつつも、「電子版を装った悪質な広告がSNS上に横行し、偽サイトにリンクされていることは確認している」と回答。「偽サイトに誘導する不正な広告や偽サイトは把握次第、SNS運営会社に削除を求めている」としている。

前沢友作さんも協力、実験に参加
　実証実験には、詐欺広告に自身の画像が悪用された衣料品通販大手、ZOZO（ゾゾ）創業者の前沢友作さんも参加。前沢さんは自身のX（旧ツイッター）のアカウントなどを「真」と投稿している。同社によると、昨年4月ごろに前沢さんに協力を求めたところ、快諾を得たという。前沢さんは昨年4月、自民党デジタル社会推進本部などの合同勉強会に出席し、被害の実態を主張し、投資詐欺広告への規制強化を求めた。米IT大手のメタなどを提訴し、損害賠償と広告の掲載差し止めを求めている。

Boolcheckには前沢友作さんも参加し、偽サイトの判別に協力している（同社提供）
　メタは1月、運営するフェイスブックとインスタグラムで、第三者機関によるファクトチェックを米国で廃止すると発表。「表現の自由」を理由にした施策で、利用者が追加情報を書き込み、間違った情報を正すコミュニティノートを採用する方針だ。（高木克聡）