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【韓国とシンガポールの大失敗】人口6万人→1万2000人まで減少、街の治安が悪化しただけじゃない…カジノ誘致に甘い夢を見た
・カジノがもたらす「負の影響」
もうひとつの先例は、韓国です。2000年当時、韓国には6つの公営ギャンブル(競馬・競艇・競輪・闘牛・宝くじ・体育振興投票券)とカジノが承認されていました。
カジノは国内17ヵ所に設置され、うち1ヵ所、江原ランドだけに自国民の入場が許されるカジノがあります。
江原地区はかつて363の炭鉱で繁栄していたのですが、相次ぐ閉山で廃れたため、カジノ誘致に合意したのです。それが1995年でした。
自国民が入場できるのは唯一ここだけだったので、年間売上額が伸び、やがて円にして1200億円に達しました。
江原ランドだけで他の16ヵ所の合計を凌ぐ額でした。これは、カジノには自国民を入れない限り、営業は成り立たないという証拠でもあります。
しかし次第に悪影響が表面化してきます。まず自殺者が増え、環境が悪化しました。周辺に金融業者が集まり、質屋も増え、ホームレスが目立つようになります。地元の農家も、カジノやホテルの野菜購入を当てにしていたのが期待はずれでした。
ホテルは地元産の野菜や果物を使わず、よそから安く購入するからです。
観光都市になるのを夢見ていたのが逆になり、住民は出て行き、若い世帯は全く住みつかなくなった結果、6万人あった人口も1万2000人までに減ったのです。
今では江原ランドを有する地元の人たちは、カジノを誘致したことを後悔して、廃止を目標としているようです。
しかしこれがまた難しいのです。撤退させても、壊すのに費用はかかるし、その跡地に何が来てくれるかというと、その可能性もないのです。
さらにもうひとつ、カジノに伴う負の側面に苦労している国にシンガポールがあります。シンガポールは東京23区と同程度の面積で、そこに550万人が住んでいます。IRが設置されたのは2010年です。カジノは2ヵ所にあり、ひとつはマリーナ・ベイ・サンズで、前述したシェルドン・アデルソン氏の会社が運営しています。もうひとつはセントーサにあります。
シンガポール政府は、カジノ管理法を制定し、カジノ規制庁を新設したうえに、国家賭博問題対策協議会も設けています。
そんなシンガポールでもNPO法人のワン・ホープ・センターによれば、国内にカジノができて、ギャンブルを間近に見ることができるようになり、大きな懸念が生じています。未成年者の飲酒が3倍、喫煙が4倍、危険ドラッグ使用が2倍、非行が3倍、警察による補導が4倍に増加しているのです。さらにマリファナやコカイン、ヘロインなどの麻薬関連事件も増えていると言います。
・政治家たちの甘言にだまされてはいけない
ー中略ー
大谷翔平選手の元通訳の銀行詐欺事件で明らかにされたのが、スポーツ賭博の違法ブックメーカーがしていたマネーロンダリングでした。
韓国とシンガポールの例では、この資金洗浄については触れませんでした。マネーロンダリングとは、不法な手段で得た資金を、高級ブランド製品を購入して国外に持ち出したり、銀行に預けたりして、出所を不明にして、合法的な資金に変える方法です。
これにカジノでのギャンブルが利用されやすいのです。現金をチップに換えるだけで、不正な資金は、正常なギャンブルのチップに様変わりするので、最も簡便な資金洗浄です。あとはカジノで大勝ちをしたといって、新たな現金を入手すれば事足ります。
カジノ内をすべてキャッシュレスにすればいいのでしょうが、これでは臨場感が薄れて客足は遠のくでしょう。
監視がむずかしいので、カジノに資金洗浄はつきものと言えます。収賄のときも、現金をチップに換えてギャンブルをさせ、それで勝った金だとすれば、収賄の足跡は消えるので、政治家には貴重な場所なのです。
帚木 蓬生/Webオリジナル(外部転載)
全文はソースから
文春オンライン 2/3(月) 11:12配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/8689fa45b27e79b4bfd0286c7681d00f9ae21051