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「早稲田の政経」が令和に大復活…慶應を抜き去り今や「京大レベル」に格が上がった激変の裏側
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■「共通テスト必須化」の衝撃
日本は今、本格的な「大学全入時代」に突入している。全大学の募集定員およそ62・5万人に対して、入学者が61・3万人と、史上初めて下回ったのだ。
要するに「選り好みをしなければ、どこかに入れる」状態になったわけだが、超難関大学では事情はまったく逆で、むしろ競争は苛烈になっている。
私立大学でこの「難化」トレンドの先頭を走っているのが、早稲田大学である。
自身も早稲田大学を卒業し、早大受験に特化した「早稲田合格塾」を運営する比良寛朗氏は「私が受験した頃と比べると、入試の難易度も、受験生のレベルも明らかに上がっています」として、こう続ける。
「大きな変化は、やはり一般選抜で共通テスト受験が必須となる学部を増やしていることです。2021年から政治経済学部、国際教養学部、スポーツ科学部で必須となっていましたが、さらに今年から社会科学部と人間科学部でも必須になりました。
とくに最難関の政経では、数学I・Aを必ず選択しなければなりません。しかも、共通テスト4科目6教科の受験者得点率は、平均81%と非常に高い。
早稲田志望者にとって、昔のセンター試験は『必ずしも受けなくていい』ものでしたが、今の子たちは共通テストにかなりのプレッシャーを感じています」
「私大文系の最高峰」である早稲田の入試といえば、かつては国語や歴史の難問・奇問が出題され、その対策に特化した受験生が有利と言われていた。
それだけに「数学必須化」の衝撃は大きく、政経の志願者はこの5年で半分以下に減ってしまった。
■早稲田政経は「いまや京大文系なみ」
だが、早稲田大学総長の田中愛治氏は「(政治学や経済学で必要な)ゲーム理論などを学ぶには数学ができないと困る」「(早稲田の入試改革は)大学教育の理想を世に問うている」と各所で語り、自信満々のようすだ。
そして事実、学力最上位層のあいだで、早稲田の人気はうなぎ上りなのである。前出の西田氏が言う。
「首都圏の最難関国立大学、東大や一橋大学、東京科学大学との併願では、ここ数年で早稲田が慶應義塾大学を圧倒しています。
慶應とのダブル合格で早稲田を選ぶ受験生はもちろん、一橋と早稲田政経に両方受かった受験生でも、一橋のある国立は遠いので早稲田を選ぶ、という人が出てきている。現在の早稲田政経は、京都大学の文系学部と同レベルになっていると言っても過言ではないでしょう。
また、かつては夜間学部だったとして軽視されがちだった社学(社会科学部)は、講義内容が幅広いため人気が高まり、政経に肉薄するほど難しくなっています。『早稲田は英国社の3科目しか勉強していない、専願の受験生ばかり』という時代は終わったのです」
■それでも慶應は余裕綽々
大学経営の「定石」からすれば、早稲田が断行したような、志望者と収入が激減しかねない入試改革には大きなリスクがある。しかし早稲田は、その賭けに勝ったと言えそうだ。
対する慶應はというと、昨今の入試改革ブームもどこ吹く風、目立った動きを見せていない。たとえいっとき早稲田に抜かれることがあろうと、ブランドでは我々が絶対的に上―そんな自負が透けて見える。都内の大手予備校幹部が証言する。
「あるとき慶應大学の関係者に、『早稲田では2004年にできた国際教養学部の人気がここ数年高まっていて、偏差値も上がっている。慶應も対抗して、国際系学部を新しく作らないのか』と聞いたら、『嫌味になるでしょ。うちはどの学部も、外国語大学なみにハイレベルな語学教育をしてるんだから』と、自信たっぷりでした。
「地方の秀才」受難の時代へ
また前出の比良氏は、難関大学の受験生や受かった学生たちの傾向の変化が、日本全体の世相の変化を反映しているのではないか、とも指摘する。
「今は動画を使った予備校の授業が当たり前になり、昔のように都会の受験生が学習面で圧倒的に有利、という状況ではなくなっていると思います。
ただその一方で、地方の経済がかんばしくない中、首都圏の家賃や物価は急速に上がっている。地方から子供を都心に進学させる、経済的なハードルは高くなったのではないでしょうか。
また、大学や学生の気風にも変化がみられます。私自身は鹿児島から上京して早稲田大学に通っていたのですが、当時と比べると、早稲田の建物はきれいに改築され、学生もまじめに勉強するようになっています。
※以下引用先で