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【中央日報時評】どん底に落ちた韓国政治、先が見えない
希望を失えば未来もなくなる。長い時計で見ると、民主主義の定着のためにこの難局はいずれ直面する過程なのかもしれない。我々の国民はどういう国民か。解放後、深刻な混乱とテロ、ソウルの主が4回も代わり国民の多数が生死の岐路に立った韓国戦争(朝鮮戦争)、4・19後の混迷期、通貨危機…すべて経験して立ち上がった国民だ。この時間が流れれば、今のこの混迷した政局もまた流れるのだろう。しかし我々が今回しっかりと立ち上がるためには、今のこの危機の性格を理解し、先を準備する議論を怠ってはいけない。
今回の危機は単に87年体制が古いことを言っているのではない。この危機はもうこの国の国家運営方式の全般的な改編が必要だということを、そして政治・政党・市民社会文化の大革新が必要だということを語っている。非常戒厳令は大統領の席に座ることになった一個人の偏狭な認識と妄想的な判断から出たものだったが、この戒厳令が出てくるまでの状況、戒厳令事態後の政党・政治家の対応は、単に大統領を弾劾して新しい大統領を選ぶことで終わるのではないことを表している。
我々の政治は敵対、憎悪、激しい対立の悪循環に入っている。我々の社会の葛藤要素がそれだけ多く根深いためでもあるが、朝鮮時代の党派争い、分裂の姿にそのまま戻るようだ。民主主義は節制、包容、妥協の文化なしにはうまく作動しにくい。内閣制、大統領制など同じ民主主義制度も国ごとに異なる形態で作動している。同じ大統領制で同じく政治退行の懸念が強まっている米国で過去30年余りの約3000件にのぼる議会の表決結果を分析した研究によると、民主党と共和党が超党派的な合意に到達した事例は国内政策63%、国際政策76%という。韓国は与党の時期に推進した政策でも野党になれば反対する。価値のための政治ではなく相手を殺すための政治をしている。この悪習・悪循環の断ち切らなければ、我々は今回の危機を克服したとは言えない。
制度の変化も必要だ。権力構造、選挙制度、政党運営制度すべて、これを契機に政治に新しい血を輸血し、妥協と協力の伝統が定着する制度的な基盤を模索しなければいけない。しかし制度だけで解決することではない。世界には良い制度が多い。それをどう運営するかがその国の政治を規定する。したがって伝統と形態が重要になる。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の不幸な逝去、朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾、文在寅(ムン・ジェイン)政権の積弊清算を経て、憤怒、憎悪、報復政治の火はさらに広がってきた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾がまた油を注ぐのではなく、解消の糸口を見いだす契機になるよう、国民は今この局面を雪に覆われた山野を歩くように管理していかなければいけない。それができなければ、この国はこれまで築いてきた繁栄と地位を返納し、停滞と衰退の道を続けることになるだろう。
憲法裁判所の弾劾審判の結果は明白だと思われる。弾劾が認容されなければ国がより大きな混乱に陥るはずだ。手続き的正当性を守りながら最大限操り上げて国政の空白、不確実性の時間を減らす必要がある。その後の大統領選挙の過程が乱闘対決にならないようにすることがもう一つの関門だ。大統領選挙に出馬する候補は選挙の過程でこの国の国政運営システム、国家支配構造改編、政治文化革新に対する本人の意志と明確なビジョンを提示して競争することを望む。大統領選挙前の改憲は時間があまりにも厳しく、大統領選挙と改憲内容論争が入り乱れるのは望ましくない。しかし改憲はこれ以上先延ばしできない国家的課題であり、大統領候補は改憲に関して覆せない約束と日程を提示しなければいけない。
人物、制度、形態が絡んだこの政局を解決するうえで最も難しいのが形態の問題だ。相手を手段、方法を問わず崖っぷちに追い込んで失敗させてこそ自分が勝利するという相手を殺す政治が、我々全員を失敗の奈落に落とすことになった。こうした事態にまでなったのは与野党双方に責任がある。政治制度を変えるだけでなく政治をする方式、政党運営形態を変えてこそ破局を避けられるということを、今回の事態が我々に物語っている。野党の大統領選挙勝利は既成事実でない。この時代の大韓民国は知恵とグローバル洞察力、包容と統合のリーダーシップを渇望している。
趙潤済 延世大学教授
中央日報 2025.01.17 14:22
https://japanese.joins.com/JArticle/328779