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豪雨で「戦前生まれ」鉄道橋に被害 相次ぐ不通、JR各社が緊急点検
豪雨災害の影響で、戦前から河川に架かる鉄道橋が相次いで不通となっている。国土交通省によると、過去20年間に橋脚が傾いたり、橋桁が流失したりしたJR各社の鉄道橋の約9割は「戦前生まれ」だった。2019年10月に各地で甚大な被害をもたらした台風19号でも2カ所で被害があり、一時不通となった。復旧までに1年以上かかることもあり、影響は大きい。JR各社は国交省の要請で緊急点検に乗り出した。
国交省によると、豪雨災害の影響で不通となっている鉄道橋は今年10月現在、JR以外の鉄道各社も含めて6路線11カ所。このうち今年8月の大雨では、いずれも長野県で、辰野町を通るJR飯田線の鉄道橋と松本市を通るアルピコ交通上高地線の鉄道橋が、橋脚が傾くなどした。いずれも戦前に造られたものだ。両路線とも一部区間が不通となり、飯田線は11月中旬ごろ、上高地線は来年6月ごろの再開を見込む。
19年の台風19号では、群馬県藤岡市と埼玉県神川町を結ぶJR八高線、茨城県大子町のJR水郡線のそれぞれの鉄道橋が被災。いずれも戦前に造られた。既に復旧したが八高線は1カ月半、水郡線は1年5カ月にわたり一部不通となった。
国交省によると、河川の鉄道橋は全国に約7000カ所あり、約7割にあたる5114カ所はJR各社が管理している。国交省の調査では、過去20年間に流されたり傾いたりするなどして被災したJRの鉄道橋は全国47カ所。うち42カ所は戦前に造られた。私鉄なども含めると、統計が残る1934年以降に被災した162カ所のうち147カ所は戦前の鉄道橋だった。
「戦前生まれ」に被害が集中するのはなぜか。国交省によると、その大半が、橋を支える基礎を川底の地面に直接設置しているためだ。豪雨災害により河川の水量が増えると、基礎部分を支える川底の地面が削られる「洗掘(せんくつ)」が進み、被害につながりやすくなる。JR各社が管理する鉄道橋のうち約半数は戦前から使われているとみられ、対策は急務だ。
国交省は9月下旬、JR各社との会合で、河川に架かる全ての鉄道橋を対象とした緊急の総点検を要請した。総点検は直後にスタート。JR各社は過去の災害の発生状況や橋脚の基礎部分の状況を踏まえ、洗掘の危険性がある鉄道橋を選定する。特に緊急性が高い場合は、22年6月をめどに、コンクリートのブロックで橋脚を固定するなどの工事を実施する。
近年は各地で豪雨災害が頻発し、被害が深刻化しているとされる。過去20年間に被災したJRの鉄道橋47カ所のうち、32カ所はこの10年間に集中している。国交省の担当者は「被害の頻度は年々高まっている。対策を早急に進めたい」と述べ、河川の改修工事なども含めて対策を講じたい考えだ。【木下翔太郎】
毎日新聞 2021/10/31 06:00
https://mainichi.jp/articles/20211030/k00/00m/040/261000c