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韓国のキム・ジヨンに共感する、日本の佐藤裕子たち…小説『82年生まれ、キム・ジヨン』の爆発的ヒットの背景とは?
特に女性たちから熱い支持を得る理由について>
ー前略ー
■日韓女性の共感
このような状況で、韓国ではある小説がベストセラーとなる。日本でも話題になったフェミニズム小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(以下、『キム・ジヨン』)がそれである。なお本節では『キム・ジヨン』の多少の「ネタバレ」が含まれることをご承知おきいただきたい。
『キム・ジヨン』は2016年に刊行された、チョ・ナムジュによる小説である。チョ・ナムジュは1978年生まれで小説の主人公であるジヨンよりも4歳年上となる。放送作家としての経歴があるためその経験を活かして、連続ドラマが展開するような形式で物語が綴られている。
『キム・ジヨン』は韓国では130万部を突破するベストセラーとなり、日本でも翻訳され翻訳小説としては2023年時点で異例の23万部を超えるヒットとなった。『キム・ジヨン』は映画化もされているが、小説と映画では物語と結末が少し異なっている。
本書の読者の皆さまにはぜひとも小説・映画の両方を見ていただきたい。
『キム・ジヨン』はこれまで女性であれば必ず体験したであろう、名もなき違和感や差別が言語化されている。
たとえば、隣の席に座った男子が自分に嫌がらせをし、それを担任に相談したら「その男子は君のことが好きだからだよ」といわれる、ストーカーのような被害に遭ったジヨンに対し、父親が「お前にも責任がある」と言うなど、女性が困っていること、苦しんでいることに対する無自覚な男性のことばが浮き彫りになっている。
このような女性が日常の中で日々感じてきた、そして今も感じている違和感を物語の中にうまく組み込んだ作品といえよう。
主人公の名前であるキム・ジヨンは個性的な名前ではなく、韓国で最も人口の多い姓であるキム(金)、1982年生まれの女性の名前第1位であるジヨンというありふれた名前だ。
その「ありふれた」ジヨンの人生が韓国の女性たちの共感を生み、一方で男性の反発を生んだ。
日本の名前では「佐藤裕子」がそれにあたるそうだが、日本でこの小説がヒットした背景には「キム・ジヨン」であるがゆえの適度な距離感がかえって共感を生んだのかもしれない。
ー中略ー
さて、この『キム・ジヨン』は先述のように日韓そして世界で異例のヒット作となった。
これまで韓国小説といえば、ドラマや映画のノベライズ、李光洙や尹東柱(ユン・ドンジュ)など植民地期に活躍した作家の作品が知られている程度であったが、『キム・ジヨン』のヒットにより書店には多様な韓国人作家の小説が並ぶようになった。
とくに『キム・ジヨン』の著者であるキム・ナムジュの作品、『少年が来る』で知られるハン・ガンなど、韓国フェミニズム小説作家の作品が多く翻訳されている。
『キム・ジヨン』のヒットはK-POPや韓国ドラマに限定されない、韓国社会を知る、新たなツールとして日本でも広まっている。
崔 誠姫(大阪産業大学国際学部准教授)
全文はソースから
Newsweek 11/2(土) 14:16配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/e3db13e4f9f62f8215afe4afe85d0647828a8d47