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【朝日新聞/社説】台湾海峡 危うい挑発を憂慮する 日米両国にとって重要なのは、いかに中国を平和路線に進ませるかである
その海峡で、中国軍が戦闘機などの動きを活発化させている。台湾に近い空域にまで多くの軍用機を進入させ、不安を高めている。
防空上の監視などのために領空の外に設ける空域を防空識別圏と呼ぶが、中国軍は最近、過去にないほど頻繁にその圏内に進入しているという。
中国の国慶節に合わせた力の誇示や、米国などの軍事演習への反発だといった見方が出ているが、明確な説明はない。
何も言わず台湾の人々に脅威を与える。進入の既成事実を重ねて「常態化」していく。そんな手法で蔡英文(ツァイインウェン)政権を圧迫することは地域の安定を揺るがす。ただちにやめるべきだ。
共産党政権は米国と台湾の間の交流の格上げなどにいらだっている。最近では、台湾の環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟申請にも反発してきた。
だが自らの政治的な主張が通らないから、武力で威圧しようとするのは乱暴に過ぎる。中台間の歴史的な問題は、あくまで対話を通じた平和的な解決が追求されねばならない。
中国は軍拡路線と並行して、南シナ海などでも力による現状変更の試みを続けている。その背景として、共産党政権が来年の党大会に向け、「政治の季節」に入っていることを指摘する見方もある。
「共同富裕」の目標を掲げ、国民の歓心を買う施策を次々に打ち出している。台湾問題でも弱腰批判を招かないよう強硬にふるまっている可能性もあるが、そんな内向きな身勝手さが中国の対外信用をどれほど傷つけているか考えるべきだ。
一方で、米欧が対抗するように軍事的な動きを強めていることも憂慮せざるをえない。
英軍艦の台湾海峡通過などに対し、中国は「対抗措置」を明言する。抑止目的であっても、軍の行動が相互に刺激しあい、負の悪循環に陥らないか。偶発的な事故を防ぐために、各国軍同士の意思疎通のチャンネルを確保しておく必要がある。
岸田首相はおととい、バイデン米大統領と電話で話した。中国への対応をめぐっては緊密な連携を確認したという。
日米両国にとって重要なのは、いかに中国を平和路線に進ませるかである。軍事的な衝突を回避し、共存共栄の道筋を探る外交の知恵が試されている。中国の危うい挑発を厳しく指弾しつつ、対立の芽を摘む複層的な取り組みを心がけるべきだ。
朝日新聞 2021年10月7日 5時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S15068274.html