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【南シナ海】米英空母含む6カ国軍の合同演習、中国海軍が追尾していた
沖縄近海に集結した自衛隊のヘリ空母「いせ」と米英3隻の空母(10月5日) Weapons of the World/YouTube
<衛星画像の分析で、南シナ海で中国の軍艦が米英の空母打撃群を追尾していたことが明らかになった>
南シナ海で行われた6カ国による共同訓練を前に、中国海軍が、米英軍の空母打撃群を追尾する目的で軍艦を展開したとみられることが、衛星画像の分析により10月5日になって判明した。
ベトナム、ホーチミン在住の海事評論家、ズアン・ダンがツイッターに掲載した衛星画像を見ると、米海軍カール・ヴィンソン空母打撃群と、英海軍のクイーン・エリザベス空母打撃群の艦船が5日、フィリピン西岸の沖合を航行している様子がわかる。
この画像で、英国の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」は、台湾とフィリピンの間に広がるルソン海峡の西側に位置している。一方、米海軍の空母「カール・ヴィンソン」は、領有権をめぐる争いが起きているスカボロー礁の北側を航行している。この環礁はフィリピンが領有権を主張しているが、中国が実効支配していると、ニュースレター「サウス・チャイナ・シー・ブリーフ」を発行しているズアンは解説する。
ズアンの公開した画像には、両国の空母打撃群を少し離れた場所から監視している「国籍不明」の軍艦が映っている。これらの船舶は、南シナ海に展開する人民解放軍の南海艦隊に属する可能性が高いとみられる。
一部始終を監視
ズアンはさらに、今後2週間続く複数の海上演習についても触れた。英国防省は5日、英海軍の空母クイーン・エリザベスが、友好国である米国、日本、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、計5カ国の艦艇および航空機と共同で訓練を行うと発表した。中国海軍の戦艦が、この共同訓練の一部始終を監視するものとみられている。
米国および同盟国の艦隊は、4日に南シナ海に到着する以前にも、10月2、3日の2日間にわたり、台湾の東および日本の沖縄の南西にあたる西大西洋の海域で、連携強化の合同訓練を行った。中国政府はこれらの訓練を自らへの挑戦と受け止めたようで、これに対する反応として、軍用ジェット機や核弾頭の搭載が可能な爆撃機を多数、台湾南西の空域に飛行させた。
日本の海上自衛隊が公開した写真には、10月2日から3日の週末にかけて実施された共同訓練に参加した米国、日本、英国、カナダ、ニュージーランド、オランダの船舶に加えて、米軍のロナルド・レーガン空母打撃群の姿が映っている。オランダ海軍のフリゲート艦「エファーツェン」は母港に帰還する途中で、訓練に参加するのはこれが最後となる。
海上自衛隊は5日、ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」に、米軍海兵隊所属のステルス戦闘機「F-35B」が発着する様子を撮影した映像を公開。この発着試験が行われた3日に、米軍との連携強化が新たな水準に達したことを明らかにした。日本の艦艇上で固定翼戦闘機が運用される(つまり実質的に空母化される)のは、第二次世界大戦以降ではこれが初めてだ。
https://mobile.twitter.com/JMSDF_SDF
10月3日、護衛艦「#いずも」は、米海兵隊F-35B戦闘機の発着艦検証作業を実施しました。海上自衛隊は、STOVL機の運用能力獲得に向け、「いずも」型護衛艦の改修を確実に実施し、海空領域における能力向上を図っています。#F35B #初の離着艦 #日米同盟 #即応 pic.twitter.com/o9PRlyRQqj
— 海上自衛隊 自衛艦隊(公式) (@JMSDF_SDF) October 5, 2021
米英の空母打撃群が、台湾の南方沖を経由して南シナ海を航行する中、4日には、バシー海峡上空を飛行する中国軍機の数が驚くほど増加した。この日の24時までに、台湾が設定する防空識別圏内に進入した中国軍機の数は、のべ56機に達した。
ズアンは5日付のニュースレターで、以下のような見解を記している。「私の意見では、(中国)軍機の飛来数の急増は、最近になって台湾近辺に米英軍の空母打撃群が集結していることに対する中国政府の強いいらだちを示しているように思える」
ズアンはさらに、今後も米軍の空母がバシー海峡を通過するたびに、同様の反応がみられる可能性があると指摘した。バシー海峡は、西大西洋、台湾海峡、南シナ海を結ぶ交通の要所だ。
(翻訳:ガリレオ)
Newsweek 2021年10月6日(水)16時26分 ジョン・フェン
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/10/6-104_1.php